2004 Fiscal Year Annual Research Report
デンマークの高齢者住宅と生活の継続性についての研究
Project/Area Number |
16730283
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Research Institution | Osaka University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
石黒 暢 大阪外国語大学, 外国語学部, 助教授 (20273740)
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Keywords | 高齢者 / 福祉 / 住宅 / 介護 / 高齢者福祉 / デンマーク / 北欧 / スカンジナビア |
Research Abstract |
デンマークでは生活・居住ユニットという形態をとる介護型住宅が1990年代から増えてきている。そこで提供されるケアは、高齢者の日常生活の多様性を支える枠組みを提供することに焦点をあてており、入居者の自己決定が重視され、身体介護と家事援助だけでなく、入居者同士の交わりを促進するための支援も行われる生活の枠組みを提供している。生活・居住ユニットではいつも同じ職員が常駐し、入居者と共に日常生活のさまざまな場面で協同作業(買い物、掃除、住戸のメンテナンス、洗濯、衣服の繕いなど)を行うことを重視している。このように、生活・居住ユニットケアでは、職員が入居者の立場にたって入居者のそれまでの生活スタイルや当たり前の日常生活を継続できるよう支えるために、働き方を再編成することが必要とされている。そこには,入居者の視点で物事を見ることを出発点とするomsorg(ケア)という価値が内包されている。プライバシーと個別性を重視するとともに、入居者同士のコミュニティ形成にも職員が積極的に関わり、人間的な交わりを日常生活において経験できるように配慮することが重要とされている。入居者は自分が役割をもっていることを感じ、ユニット内でのアイデンティティを確立し、それによってはじめて自分の「居場所」を確保する。高齢者の生活の継続性を支えるこのような取り組みは、デンマークの高齢者福祉施策のなかで必要性がますます認識されてきており、本研究の初年度の実績としては、文献調査と現地調査により、その理念と実践の詳細が明らかになった。
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