2004 Fiscal Year Annual Research Report
要介護高齢者のウェルビーイングとその構築過程に関する研究
Project/Area Number |
16730288
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
渡邉 敏惠 (楠永 敏惠) 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 助手 (90363788)
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Keywords | 要介護高齢者 / ウェルビーイング / 質的研究 / 対処 / 病いの経験 |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)日本の要介護高齢者を対象にして、要介護状態になることの困難、生活や人生を再構築する過程、再構築を左右する対処のありかたを経時的に把握し、定義しなおされたウェルビーイングの構造と特徴を明らかにする。(2)それらを通して、要介護高齢者の生活・人生とそれに関わるニーズを把握するための方法を提示するとともに、保健・医療・福祉サービスのあり方への提言をする、である。 16年度は、先行研究の精読と研究の枠組みの検討を行った。また、5名の在宅要介護高齢者にパイロットスタディを行い、生活上の困難と対処、ウェルビーイング(幸せや支え)などについてインタビューした。Loflandら(1995)を参考にしながら、ソフトをもちいて質的に分析した。 その結果、困難については、「心身機能の低下による日常生活上の制約」「疼痛と不快感」「生きがいの喪失と獲得の困難」「将来に対する不安」があることがわかった。それらに対して、「目標の再設定」「残存能力と資源を豊かにする」「資源を用いて喪失を補う」「よいことをさがす」「深く考えない」からなる行動的・認知的対処をとっていた。ウェルビーイングとしては、「支えとなるものがある」「期待が裏切られない」「相対的な幸福感」「生きる意味の獲得」によって得られていることがあげられた。 要介護状態になることにより新たな困難を抱えること、それに対して対処されており、期待水準を下げるなどしてウェルビーイングが得られている可能性が示唆された。ただし、例数が少なく、どのように構築されるのかという過程を見ることがまだできていない。今後は、対象数を増やして追跡調査を行い、経時的変化を捉える予定である。また、日本の要介護高齢者の特徴も考察する必要がある。
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