2005 Fiscal Year Annual Research Report
生活モデル理論に基づく高次脳機能障者の生活支援プログラム評価に関する研究
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16730292
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Research Institution | Tohoku Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
志水 田鶴子 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 講師 (70326750)
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Keywords | 生活モデル理論 / 高次脳機能障害 / 高次脳機能障害者 / 小規模作業所 / 3段階のプログラム / 生活支援 |
Research Abstract |
本研究は、生活モデル理論に基づくプログラムを実施している高次脳機能障害者の小規模作業所での実践を評価することで、生活モデル理論によるプログラムの有効性を実証し、高次脳機能障害者にとってより効果的な生活支援プログラムを開発することが目的である。 今年度は、第1段階の作業所に通所する重度高次脳機能障害者の認知リハビリテーションの効果の検証を中心に研究を進めた。高次脳機能障害者は退院直後、特に記憶障害が重度であることが多い。記憶障害は生活の中で混乱を引き起こし、家族の介護負担を実感させる。第1段階の作業所では、自分の行動を思い出す手がかりとして写真を撮っていた。「さっき〇〇やってたよね」といった言葉では、記憶を引き出すことは極めて困難である。写真は何度見ても場面が変わることがないので、本人も勘違いではなく、自分が覚えていないことを直視させられ、自身の障害に対する認知が深まると解釈できる。第1段階では、写真には必ず本人が活動している場面が収められており、それをみて「ふりかえり」を作成する。自分が写っているにもかかわらず、思い出せない場合には、匂いや感触など感覚的な情報や快の感情(本人が楽しそうに笑っていた場面など)の情報を中心に補足し思い出せるよう支援を行う。第1段階がクリアすると、次の段階では本人が後姿で活動を行っている場面など、最初よりも思い出す手がかりが少ない写真を撮って、「ふりかえり」を書かせる。これでも思い出せない場合には、補足情報を提示する。第3段階では、自分が写真を撮って(本人は写っていない)、それを見ながら「ふりかえり」を作成できるようする。言葉だけで何度も情報を提供するよりも、視覚的情報が繰り返し確認でき、かつ感覚的な補足提供することで、記憶を思い出す手がかりになることが分かった。また、回復の早い人では2ヶ月程度で自分の写っていない写真をみながら「ふりかえり」を補足情報なしに記録できるようになり、詳細な観察による記録が可能になることが明らかとなった(誤字などはまだ見られる)。生活の中で、本人が好きなものや印象的な場面は、誰でも記憶を想起するための手がかりになる。高次脳機能障害者自身の生活を活用することで、効果的な認知リハビリテーションになっていると考えられる。来年度も継続し効果評価を実施したい。
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