2006 Fiscal Year Annual Research Report
老人施設の集団活動における痴呆症高齢者と介護者の相互作用の成立過程
Project/Area Number |
16730314
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小野寺 涼子 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師 (70360203)
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Keywords | 老人施設 / 団活動 / 認知(痴呆)症高齢者 / 相互作用 / 社会文化的アプローチ / ナラティブ |
Research Abstract |
今年度はこれまで収集したデータの分析に重点を置く一方で,各対象地での最終調査を実施した.具体的には,3月から4月にかけて北海道の介護老人保健施設において約2週間の参加観察,10月に高知県のグループホームで2日間の観察と面接調査を行った. 収集したデータはデジタルデータとして記録・保存され,主要な相互作用場面についてはトランスクリプトが作成された.トランスクリプトを質的に分析した結果,介護者と認知症高齢者間の相互作用の特徴として,協同的にナラティブ(物語)を生成し活動を達成している場面が観察された.ナラティブを通して,認知症高齢者はリハビリテーションといった施設活動に意味づけを行い積極的に参加する可能性が示唆された.また認知症高齢者の個人史に関する話題が介護者によって積極的に取り上げられており,ナラティブの資源として機能する傾向にあった.一方,施設の環境特性として,各施設とも活動に用いる道具に参加者がアクセスしやすいように場が1構造化されていた認知症高齢者自身が自発的に道具を利用することは少ないものの,道具の配置によって互いの活動への参加の度合いが可視化され,他の高齢者や介護者が認知症高齢者に対して関わりを生成する契機および制約として機能していたと考えられる. これらの結果については,国内誌への発表(2007年1月)と海外のリサーチグループ(2007年2月)および国際学会Nordic Educational Research Associationで発表(2007年3月)し,国内外からの研究者のコメントを参考に,結果の妥当性について再検討した.
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