2005 Fiscal Year Annual Research Report
居住環境整備と犯罪統制に関する地域住民による主体的活動の促進に関する研究
Project/Area Number |
16730321
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
鈴木 護 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 主任研究官 (10356214)
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Keywords | 犯罪不安感 / 被害リスク知覚 / 防犯環境設計 / CPTED / 第二世代の防犯環境設計 / Seccmd-Generation CPTED |
Research Abstract |
最近の治安情勢の悪化に伴い、犯罪被害に対する人々の不安感も増大しているが、過度の犯罪不安感は地域住民の生活の質を低下させるだけではなく、「割れ窓」理論の説明にあるように、地域への非介入・無関心と効力感低下を引き起こし、一層の治安情勢と犯罪不安感の悪化をもたらす。今年度は、物理的な居住環境と社会的な居住環境が、犯罪不安感に与える影響を検討するため、昨年度実施した質問紙調査の分析を進めた。特に、居住地域での犯罪被害の伝聞(indirect victimization)が、地域環境認知や犯罪不安感などと、どのように関連しているかについて検討した。 分析では、犯罪被害の伝聞が、好ましくない地域環境と正の相関を示し、その両者が非公的社会統制を媒介として地域住民の犯罪不安感に影響する、という仮説モデルを構成し、その検証を行った。初期モデルでは仮説への寄与が有意ではない変数があったため、修正指数と適合度指標を基に変数を取捨選択し、モデルの構成や適合度指標の点で概ね満足できる最終モデルを得た。変数間の連関は、ほとんどが仮説どおりであった。例えば非公的社会統制に対する、犯罪被害の伝聞と好ましくない地域環境の標準化パス係数は、それぞれ0.5となっている。しかし非公的社会統制の強化が、地域住民の犯罪不安感を低減させるという仮説の連関は確認できず、逆に非公的社会統制の強化が、地域住民の犯罪不安感を増大させている傾向が明らかとなった。これは非公的社会統制が、地域の社会特性的な意味合いよりも、犯罪発生への対処行動状況的な性格が強かったことが原因となっていることを示唆するものであると考えた。なお、学会発表の際の討議を踏まえ、地域指標をより充実させて分析を継続することとした。
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