2004 Fiscal Year Annual Research Report
うつ病の生物・心理・社会的病態モデルの検討とそれに及ぼす認知行動療法の効果
Project/Area Number |
16730351
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 伸一 広島大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (00326414)
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Keywords | うつ病 / 認知的特徴 / 心理・社会的機能 / 脳機能 |
Research Abstract |
本研究は,うつ病患者の脳機能障害および認知機能障害の特徴を明らかにするとともに、うつ病患者の脳機能障害および認知機能障害が患者の心理・社会的機能やストレス反応性にどのような影響を及ぼすかを検討し,うつ病の生物・心理・社会的病態モデルを構築することを目的としている.この目的を達成するために,本年度は,以下の2つの研究を行った. 研究1として,うつ病患者、高抑うつ者、および健常者を対象とした調査を行い、うつ症状、認知機能、および心理・社会的機能の関連性を検討した.その結果,抑うつ傾向が高い者ほど,出来事に対する否定的解釈や将来に対する否定的な予測に関する思考が多く,その反芻傾向が高いことが明らかなった.また,うつ病患者では,健常者に比べてこの傾向がさらに顕著であり,社会的機能が大きく低下していることが明らかにされた. 研究2として,研究1の結果をふまえ,うつ病患者、高抑うつ者、および健常者を対象として、否定的な事象の反芻課題遂行時の精神性発汗と,将来の報酬予測課題遂行時の脳機能を検討した.その結果,否定的な事象の反芻課題においては顕著な違いは認められなかったが,将来の報酬予測課題においては,うつ病患者の右前頭前野・右頭頂葉・帯状回前部・視床・基底核・左小脳の活動性が,健常者に比べて低下していることが明らかにされた.これらのことから,うつ病患者は,将来の報酬予測に基づく意思決定に関連した脳内ネットワークの反応性が低下していることが示唆された。
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