2004 Fiscal Year Annual Research Report
心理療法の効果を規定するクライエントの内的要因に関する認知臨床心理学的研究
Project/Area Number |
16730356
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
伊藤 義徳 琉球大学, 教育学部, 講師 (40367082)
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Keywords | 情動的処理 / 認知的処理 / AAT / TCT / 認知的バランス / クラスター分析 / 階層的重回帰分析 |
Research Abstract |
伊藤・根建(2002)は、情動処理を反映するAAT(Affect-related Automatic Thought ; AAT)と認知処理を反映する(Task-related Controlled Thought ; TCT)という概念を提唱している.本研究では,クラスター分析と階層的重回帰分析を用いて、AATとTCTの活性パターンが感情の喚起に及ぼす影響について検討した.大学生164名に対して,気分の指標とAATとTCTの指標(ACS-AT;小住・伊藤・根建,2001)を施行した。調査は,はじめに平常状態の測定を行った.次に、不安や緊張を喚起しやすい場面をイメージさせた.最後に、想起した場面でどのような気分や思考を生じるかについて、平常時と同様の質問紙に回答した。結果は以下の通りであった.はじめに,平常時から想起時にかけてのAATとTCTの変化のパターンを検討するために、それぞれの変化量についてk-means法、Qモードによるクラスター分析を行った。その結果,(1)AAT、TCT共に変化が小さい型、(2)AATが低減し、TCTが上昇する型、(3)AAT, TCT共に上昇する型、(4)AATが上昇しTCTが低減する型の4つのクラスターが得られた。このうち,クラスター4は他のクラスターと比して有意にネガティブ感情を喚起させることが示された。さらに、気分の変化量を目的変数、AAT、TCTの変化量及び両者の交互作用項を説明変数とした階層的重回帰分析を行った結果,気分の変化を説明するのはいずれもAATの得点であり、TCT及びAATとTCTの交互作用項については有意な結果は得られなかった。気分の変化を説明する要因は純粋なAATの変化であり、TCTの変化は気分に影響を及ぼさないと考えられる。
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