2005 Fiscal Year Annual Research Report
急性ストレスのコントロール可能性が自律神経系、内分泌系、免疫系に及ぼす影響
Project/Area Number |
16730373
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Research Institution | Mie Prefectural College of Nursing |
Principal Investigator |
磯和 勅子 三重県立看護大学, 助手 (30336713)
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Keywords | コントロール可能性 / 急性ストレス / 精神神経免疫学 |
Research Abstract |
ストレスのコントロール可能性の影響を検討するために、初年度は、急性ストレス課題中における自律神経系、内分泌系、免疫系の変化を、コントロール可能(C)条件と不可能(UC)条件で比較した。結果、課題の効果として、アドレナリン及びノルアドレナリンが増加し、心拍数及び血圧が上昇した。また、自然免疫であるNK細胞が増加し、獲得免疫であるT及びB細胞が減少した。これらは典型的な急性ストレス反応である。コントロール可能性の効果として、UC条件の心拍数がC条件よりも少なく、コントロール不可能事態では心臓反応が抑制される可能性が示唆された。 平成17年度は、コントロール可能性の効果に関する継時的変化と各指標における効果の出現時間を検討するために、初年度と同じ課題及び指標を用いて、2日間に及ぶ実験を実施した。課題は、既に自律神経系の活性を引き起こすことが確認されている、時間圧をかけたクレペリン式の暗算である。コントロール可能性の操作は、回答の正誤のフィードバックにより行い、正答の場合には○を、誤答の場合にはノイズの伴った×をディスプレイ上に呈示した。C条件は正しいフィードバックが与えられた。UC群は、一定の割合で、実際の回答の正誤とは無関係に偽りのフィードバックが与えられ、その確立はC条件の正答率とヨークとした。指標は、心臓血管系として心拍数、収縮期血圧、拡張期血圧を、内分泌系としてアドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾールを、免疫系としてリンパ球サブセット(CD3+T細胞,CD4+ヘルパーT細胞,CD8+細胞障害性T細胞,CD19+B細胞,CD16+CD56+NK細胞)を、心理系として主観的なコントロール可能感を用いた。被検者は、1試行につき6分〜30分の課題を4試行(1日目3試行、2日目1試行)実施し、3試行目と4試行目の間は24時間設けた。各指標は課題の前後で測定された。また、コントロール可能性の操作は、1試行目のみで行った。結果、全ての試行において、初年度に確認された典型的な急性ストレス反応が確認された。また、試行回数が増えるに従い、C条件の反応はUC条件の反応に比べ弱まった。コントロール可能性の効果として、2日目の心拍数、NK細胞数、CD4+ヘルパーT細胞数が、C群に比べUC群で有意に少なかった。NK細胞やその他のリンパ球サブセットの変化は、自律神経系及び心臓反応により導かれる。つまり、コントロール不可能事態では、自律神経系及び心臓血管系の反応が抑制される可能性が示唆された。
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