2004 Fiscal Year Annual Research Report
外来語の影響を考慮した中間言語心的辞書モデルの構築
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16730379
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
駒木 亮 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 人間情報科学研究所, 研究員 (80374114)
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Keywords | 外来語 / 心的辞書 / 第二言語学習 / 中間言語 / 音声知覚 / 音声生成 / 語彙学習 / 語彙アクセス |
Research Abstract |
外国語単語の認知処理に及ぼす外来語の影響について探るための第一段階として,日本語における外来語を,原語である英語で綴った際に見られる誤りについて調べる実験を行った.大学生・大学院生30名を対象に,(1)「外来語定着度調査」(国立国語研究所,2002-2004)の対象語,(2)「日本人英語学習者の学生のための,日本語に定着した外来語を持つ高頻度の英単語語彙」(Daulton,2003),(3)日本語話者が聞きとりや発音の際に混同しやすい音素である英語の/r/-/1/,/b/-/v/,/s/-/th/で対立をなす単語ペアに含まれる英単語(駒木,山田,2003),などの一部をカタカナで視覚呈示し,対応する英単語をキーボードで入力する課題を課した.その結果,(1)綴りを正しく再生できる割合は約30%程度と低いこと,(2)再生率は呈示された外来語の親密度には左右されず,正解である英単語の親密度によってある程度予測できること,(3)混同しやすい音素どうしの綴り誤りは,rをlに誤記する割合よりもlをrに誤記する割合のほうが2倍程度高いなど,対称的ではないことが明らかになった.(2)の結果から,外来語として十分定着している語であっても英語の正書情報の活性化が妨げられることはなく,英語の知識に依存して正書情報の再生が行われることが示唆される.これは同時に日本語に存在する外来語と英単語のつながりが強くないことを示しており,外来語の影響を考慮した心的辞書モデルの枠組みを作る上での有効な示唆を得ることができた. また,外来語としての定着度の異なる英単語の聞きとりや発話について調べるための認知実験や発話分析の準備として,(1)日本語に外来語を持つ英単語を英語話者プロナレータ2名が発話した実験刺激用音声,(2)アマチュアの日本語話者約30名が英単語を発話した音声,の収録をそれぞれ実施した.
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