2004 Fiscal Year Annual Research Report
戦前・戦後初期の日本におけるカリキュラム改革と学力論に関する研究
Project/Area Number |
16730385
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
冨士原 紀絵 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (10323130)
|
Keywords | カリキュラム改造 / コア・カリキュラム / 綜合学習 / 明石女子師範学校附属小学校 |
Research Abstract |
本年度は1930年代から戦時中、戦後を通してカリキュラム改造実践校として著名な兵庫県明石女子師範学校附属小学校(以下、明石附小)のカリキュラムの特徴を調査分析した。その際、1930年代に及川平治主事のもとで進められていた教科カリキュラムの生活カリキュラムへの改造と、戦時中の国民学校体制下における綜合教育、そして戦後のコア・カリキュラム実践の連続性の有無という視点から検討を加えた。従来の研究では、戦後の明石附小のコア・カリキュラムは当時の日本全国のコア・カリキュラムのモデル的存在とされてきたが、それがいつ、いかなる経緯で始まったのかを解明した研究は皆無である。今回、学校文書を調査したところ、コア・カリキュラムの実践が始まったのは終戦から3年を経た1948年からであることが明らかになった。そこで、終戦直後の3年間が戦前、戦時中と如何に連続していたのかを解明する作業を中心とした。その結果、終戦直後の実践は戦時中の国民学校のカリキュラムを踏襲しておりコア・カリキュラムに直に繋がってはいないこと、その一方で、戦後新たに文部省によって規定された社会科の実践を中心として国民学校期の教科カリキュラムの問題や限界に直面しており、それがコア・カリキュラムへの転換の直接の契機であることが明らかになった。また、終戦直後から低学年では完全に教科を撤廃した綜合学習を始めており、その実践の中で如何に教科の学力をつけるのかという課題に自覚的に取り組んでいたことが明らかになった。 現在は、1948年以降のコア・カリキュラムによる実践が戦前、戦時中、そして終戦直後のカリキュラム論、学力論と如何なる関係にあるのかについて、分析を進めている。 同時に、学力形成の上で小学校以上にカリキュラム改造が困難であったと推察される戦後の新制中学校のコア・カリキュラム実践についての資料を調査・収集している。
|