2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16730393
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
成 玖美 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 助教授 (40363949)
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Keywords | 在日韓国・朝鮮人 / 生涯学習 / 民族教育 / 民族運動 |
Research Abstract |
本研究は、学校以外の場での学習機会が在日韓国・朝鮮人としての主体性の形成や自己実現に大きな影響を与えている現実に鑑みて、フォーマル教育からノン・フォーマル教育までの総体を視野にいれた、在日韓国・朝鮮人の戦後の生涯学習実践史を明らかにすることを目的としている。 今年度は、昨年度から引き続き、在日韓国・朝鮮人を主体とする民族団体/NPO活動団体等の布置を明らかにしつつ、中でも90年代後半以降に出現した在日NPO活動について研究をすすめた。朝鮮半島の本国と直結し、あるいは本国に対する民主化運動を目的とした従来の在日民族運動とは異なり、近年の在日NPO活動には、日本社会にねざしつつ、東アジア圏に開かれた活動を志向するものがある。今年度はこうしたNPOに対する聞き取り調査に基づきつつ、特にヨーロッパを中心とするシティズンシップに関する議論を整理しながら、現代の在日NPO活動が探求・発信する新しいシティズンシップのあり方について、考察を行った。 具体的に得られた知見としては、第一に、従来の民族運動では、国籍(韓国/朝鮮籍)の維持が重要な凝集力となっていたが、近年のNPO実践においては国籍選択の如何は活動の柱ではなく、国籍(形式的シティズンシップ)問題は扱いにくいものとなっている。第二に、在日NPOでは実質的シティズンシップ面での差別的制度に対する社会提言活動を維持しているが、その「政治的参加」の場は日本だけではない。自らを国家から開かれた存在とし、自らを日本(地域社会)のcitizenであり、祖国のcitizenであり、東アジアのcitizenであると重層的に自己同定することで、歴史性を引き受けた上での新しいシティズンシップの方向性を提示している。 来年度はさらに、在日韓国・朝鮮人個人のライフコースと生涯学習の関係について、研究をすすめていく予定である。
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