2004 Fiscal Year Annual Research Report
算数教育における“図形"領域の学力低下の阻止と学力向上を目指した実証的基礎研究
Project/Area Number |
16730422
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
渡邉 伸樹 京都教育大学, 教育学部, 講師 (10362584)
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Keywords | 奥行きのとらえ / 見取図 / 空間認識 / 図形領域 / 立方体 |
Research Abstract |
まず,現行教育条件下における小学生の奥行き空間認識の様相を立方体の描画調査から検証した。検証するにあたって,子どもの空間認識の発展段階を(1)鉛直・水平の世界観→(2)俯瞰的鉛直・水平の世界観→(3)前見取図的世界観→(4)見取図的世界観→(5)数学的遠近法の世界観と設定した。この結果,中・高学年になっても本来獲得すべき段階の世界観に到達できていない子どもが多いことが分かった。そこで,本研究ではその打開を目指して,未だその発展の要因が明らかとされていない(2)→(3)の獲得段階に焦点をあてることにした((1)→(2)はすでに明らかにされている)。その結果,小学校3年生段階で獲得が可能であること(獲得の必要性)が認められた。一方,この段階への発展の要因について,先行研究から地面(基底面)に対する上下左右前後及び重ねによる奥行きのとらえの獲得が必要であることが示唆された。このことより,地面(基底面)に対する上下左右前後及び重ねによる奥行きのとらえの獲得が前見取図的世界観の獲得につながるという仮説をたてた。仮説の妥当性の検証の一つとして,様々な描画調査を行った。その結果,前見取図的世界観の獲得には,これらのとらえの獲得が重要であることが示唆された。続いて,3年生段階においてこれらのとらえの獲得が可能である教材を開発し,実践を試みることから,仮説の妥当性を検証することにした。開発した教材(3種類)により,3年生を対象として教育実験を行った結果,これらのとらえを獲得できることがわかった。さらに,描画調査によりこれらのとらえを獲得できた子どもの多くは前見取図的世界観に到達すること,すなわち仮説の妥当性が示された。これらのことより,小学校3年生を対象として,地面(基底面)に対する上下左右前後及び重ねによる奥行きのとらえを獲得させる教育を行うことにより,前見取図的世界観の獲得が可能であることが明らかになった。
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Research Products
(3 results)