Research Abstract |
今年度は,最終年度にあたり,報告書の作成を中心に,調査及び実践を行った。 調査は,北海道函館市,長野県長野市,岡山県岡山市,アメリカ合衆国ノースカロライナ州を,保護者と専門家の連携協力が進んでいる先駆的な地域として取り上げ,各地の実践を報告した。また,実践として「保護者のための学習会」を組織し,「個別の支援計画」を作成した。 以上の研究結果から,支援会議を開いて一堂に会し,情報交換を定期的に行う従来の方法に加え,学校や専門家からの情報を保護者に仲介(管理)してもらいながら,個別の支援計画を情報交換のための道具として活用することが有効であると分かった。以下に,そのまとめを記す。 ○自閉症を併せ有する子どものための個別の支援計画は,その障害の特性に応じた支援方法等を記載するなどしてより具体的に伝える必要がある。そのためには,例えば学齢期では教師と保護者が協力し合ったり,保護者間で様式を共有し合ったりすることが有効である。 ○本人や保護者が,「前向きな発想」や「地域の広がり」を強く意識することができるように,作成する過程(プロセス)を一層重視する必要がある。例えば,作成する書式を色やデザインを工夫して想像力をかき立てる工夫をしたり,ワークショップの技法などを取り入れて関係者間や保護者同士の協議が円滑にすすむように工夫したりすることが有効である。 ○これからの社会で求められる情報の管理能力のためには,様式等の作成段階から本人や保護者が参加することの方が,情報を管理しやすく,必要に応じて情報を調整できる。 ○支援者としての専門家の仕事は,本人や保護者が円滑に「個別の支援計画」を作成,活用することができるように支援することが第一の目的であり,求められた情報をニーズに応じて分かりやすく提供し,必要に応じて「前向きな発想」や「地域の広がり」につながるような仕組みを作ることが最も大切なことである。
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