2004 Fiscal Year Annual Research Report
リーマン多様体の崩壊と微分形式のラプラシアンの固有値の研究
Project/Area Number |
16740026
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 淳也 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助手 (10361156)
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Keywords | ラプラシアン / 固有値 / リーマン多様体 / 崩壊 / 微分形式 / コホモロジー群 / 調和形式 |
Research Abstract |
閉Riemann多様体が崩壊した場合の微分形式に作用するLaplacianの固有値の振る舞いについて研究を行って来た.この場合の興味深い現象として,Ricci曲率の下限と直径が一様に押さえられた崩壊において,微分形式の固有値が0に収束する小さい固有値の存在と,反対に∞に発散する大きい固有値の存在が挙げられる. 本年度は,まず,大きい固有値の存在とその多様体の幾何学的な性質の関係について研究を行った.考察したRiemann多様体の崩壊は,崩壊すると多様体のトポロジーが変化し,かつ,極限空間が境界を持つような場合である.これは,断面曲率が下にのみ有界な崩壊で現われる非常に基本的な状況である.特に,2つの直積的な境界付き多様体をその境界で貼り合わせてできる崩壊において,対応する大きい固有値の存在について研究した.その結果,大きい固有値が存在するためには,微分形式の次数の制限と崩壊のある種のファイバーのコホモロジー群が消滅する,という位相的条件によって完全に特徴づけられることが分かった. 第2の成果は,関数と$p$-形式に作用するLaplacinan固有値の大小関係の比較についてである.すべての調和$p$-形式の長さが定数であるような閉Riemann多様体では,$p$-形式に作用する第$k$固有値は関数の第$k$固有値以下である,という結果を得た.つまり,微分形式の次数に対応した固有値の大小関係が,調和形式の長さが一定という幾何学的な条件によって規定されるということである.このような多様体の典型的な例として,等質なRiemann多様体が挙げられる.この結果より,調和形式の長さが定数であるようなRiemann多様体の崩壊では,常に大きい固有値が存在しないとも分かった.
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