2005 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚バリアー機能の回復機構に対する数理モデル化とその計算機支援解析
Project/Area Number |
16740053
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長山 雅晴 金沢大学, 自然科学研究科, 助教授 (20314289)
|
Keywords | イオン伝播現象 / 反応拡散モデル / 老化現象 / 局在解 / 進行パルス / 分岐解析 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き,皮膚バリアー機能を担っている角質層が破壊されたとき,角質層がどのような過程で急速に回復するのかを数理モデルの視点から解明することを目的として遂行してきた. 実験において,角質層が正常な皮膚ではカルシウムイオンが表皮組織中で深さ方向に局在しており,角質層が破壊されるとカルシウムイオンが局在しなくなり,表皮組織の内部に向かってカルシウムイオンが伝播する現象が知られている.この事実から,最初にカルシウムイオンの局在化と伝播現象を再現するための数理モデル化を行った.ここでは,カルシウムイオンの興奮・振動現象を記述する常微分方程式系のモデル方程式がすでに提出されていることから,このモデル方程式を反応拡散方程式系に拡張することで数理モデル化を行った.この数理モデルを十分広い区間(境界の影響を受けない)で数値計算すると,あるパラメータに依存してカルシウムイオンが空間非一様な振動をする解とカルシウムイオンが空間的に局在する解を得ることができた. 次にカルシウムイオンの局在化がより角質層に近いところで起こる現象の再現を数理モデル化した.この現象を再現するために表皮細胞の老化を考慮した.老化現象によって細胞間でのカルシウムイオン伝播の伝播係数が異なる場合と細胞の興奮性が異なる場合が考えられるが,どちらにおいても老化した表皮細胞付近に局在化するような現象を再現できた.この事実から,表皮細胞の老化現象がカルシウムイオンの局在化に影響していることがわかった。 また,カルシウムイオンの局在化から非一様な振動現象への分岐現象を解析するための数値計算プログラムを開発した.これにより境界の影響を受けない局在解から進行パルス解に分岐することがわかった.このプログラムは一般の反応拡散系モデルにも拡張可能であり,実際に発熱反応拡散方程式においても適用し,同様に局在解から進行パルス解への分岐現象および進行パルスの解構造を数値的に求めることに成功した.
|
Research Products
(3 results)