2005 Fiscal Year Annual Research Report
金融派生商品に対する価格付け理論の確率論的アプローチに関する研究
Project/Area Number |
16740062
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
新井 拓児 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (20349830)
|
Keywords | 数理ファイナンス / 価格付け理論 / 確率積分 / semimartingale / 非完備市場 / 同値martingale測度 / mean-variance hedging / 効用関数 |
Research Abstract |
今年度の前半は、昨年度後半に取り掛かったUtility Indifference Valuationにおける近似法の研究を引き続き行った。これは、指数型効用関数をべき乗関数を用いて近似することにより、条件付請求権に対する可積分条件を緩めることができる。今年度は、べき乗関数を用いた近似法の漸近挙動を調べ、指数型効用関数のIndifference Valuationに確率収束していることを示した。このことにより、今回提案した近似法が指数型効用関数の拡張としての有効性を示せた。この結果を、いくつかの学会や研究集会で発表した。 さらに今年度の後半は、mean-variance hedgingの拡張として、条件付請求権とstrategyの価値の差のp次平均(p>1)が最小となるようなhedging手法の研究に取り掛かった。数学的には、確率変数の確率積分空間上へのL^p-射影を求める問題と同値である。p=2の場合がmean-variance hedgingである。このhedging strategyから自然に導かれる条件付請求権の価格の数学的特性についても研究した。Mean-variance hedgingの場合、価格は条件付請求権のvariance-optimal martingale measureの下での期待値で与えられる。ここで、variance-optimal martingale measureとはRadon-Nikodym導関数がL^2ノルム最小となるmartingale測度である。従って、L^Pの場合、価格が条件付請求権のq-optimal martingale measureの下での期待値で与えられると予想される。但し、q>1はpの共役で、q-optimal martingale measureとは、Radon-Nikodym導関数がL^qノルム最小となるmartingale測度である。しかし、今回の研究で、この単純な予想は成立しないことが分かった。そして、L^pの場合の価格が射影作用素を用いて特徴付けられることが分かった。
|