2006 Fiscal Year Annual Research Report
非線型拡散方程式系に現れる遷移層のダイナミクスの研究
Project/Area Number |
16740090
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
中島 主恵 東京海洋大学, 海洋科学部, 助教授 (10318800)
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Keywords | 非線型拡散方程式系 / 特異極限 / 遷移層 / 界面(interface) / clustering layer / boundary layer / generation of interface / motion of interface |
Research Abstract |
本年度は球対称な遷移層をもつ解の安定性と非球対称解の構成について研究を進めた.場所によってポテンシャルの型が異なる双安定型の方程式を球の上で考える. 空間1次元の場合この方程式はAi-Chen-Hastings(1996),浦野一申請者一山田(1996)により扱われ,一箇所に折り重なった遷移層を持つ解の存在が示された.またこれらの解のモース指数は,遷移層やスパイクの数と位置により完全に決定されることが示されている.一方,空間多次元の場合にはDancer-Yan(1994)が折り重なった遷移層をもっ球対称解の存在を示し,遷移層の数や配置のしかたを調べているが,安定性については触れていない.空間次元1次元の解と空間多次元の球対称解を比べると,遷移層の配置のしかたや現れうる遷移層の数などの形状に関する性質については全く同様であることがわかる. これにたいし1次元の解の安定性とと多次元の球対称解の安定性は全く異なる.1次元の場合のモース指数は解のもつ遷移層の数と配置により決定される.一方多次元の場合,解のモース指数は拡散係数Dを微小とするとともに限りなく大きくなる.以上の現象を数学的に厳密に証明した. 最近Du-申請者により次のような結果がえられた. 定理1.球対称解のモース指数は0(すなわち安定である)か,Dの-N/2乗のオーダーのどちらかになる.とくに折り重なった遷移層をもつ球対称解のモース指数はDの-N/2乗のオーダーである. 定常解のモース指数は直観的な表現をあえて用いれば次のようなものである.不安定定常解にある摂動をくわえると,解はその定常解の近くにとどまらず離れていってしまうことがあるはずである.その不安定な方向への摂動の加え方が(定数倍を除き)何種類あるかを示すのがモース指数である.すなわちモース指数は不安定解の崩れ方のバリエーションをはかる指数ともいえる.このように考えれば空間次元が大きくなるとともに定常解の崩れ方も多様になり,モース指数は定理の主張のオーダーで増大することも比較的自然に思われる. さらに非球対称解について次の結果が得られた. 定理2.拡散係数を徐々に小さくすると、次々に球対称解から非球対称解が分岐する。
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