Research Abstract |
本研究は,可積分系における楕円ワイル群,楕円ルート系の役割を明らかにすることを目的としている。初年度である平成16年度は,アスキー・ウィルソン多項式と呼ばれる直交多項式の代数的構造を,楕円ヘッケ代数との関連を通して調べた。楕円ルート系には自然にモジュラー群SL(2,Z)が作用するが,そのSL(2,Z)作用を元にして異なるパラメータの楕円ヘッケ代数を結ぶ同型写像を構成し,それを用いてアスキー・ウィルソン多項式の対称性を議論した(東大・西澤氏との共同研究)。得られた結果は,野海・ストックマンによる結果を拡張するものである。この結果に関しては,以下のセミナー,国際研究集会で発表している: ・SIDE6 (Symmetries and Integrability of Difference Equations), Helsinki, Finland,2004年6月. ・International workshop "Recent Progress in Solvable lattice Models",京大数理研,2004年7月. ・九州可積分系セミナー,九州大学箱崎キャンパス,2004年8月. 現在は,この結果に基づいて,より一般の楕円ルート系と特殊函数との関係を調べているところである。 もう一つのテーマとして,ソリトン方程式に対する楕円ワイル群の作用が挙げられる。現在までのところは,楕円ワイル群を調べるための準備段階として,KP階層に対するアフィン・ワイル群作用,および相似簡約としてパンルヴェ型方程式を得るための統一的な方法について研究した(東北大・菊地氏との共同研究)。得られた結果については,論文を発表するとともに,次の研究集会で発表している: ・短期共同研究「可積分系数理の展望と応用」,京大数理研,2004年8月. こちらの題材については,楕円ワイル群が表れる系を探すことが,次年度以降の大きなテーマとなるであろう。
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