2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16740108
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永田 伸一 京都大学, 大学院・理学研究科・附属天文台, 助手 (30362437)
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Keywords | X線光学 / 多層膜 / 太陽プラズマ / 偏光計測 |
Research Abstract |
本年度は、極端紫外線領域の太陽プラズマの偏光観測の実現に向け、1keV輝線の多層膜偏光子の基本設計と開発を実施した。極端紫外線から軟X線領域の輝線の偏光観測による太陽プラズマ診断は、プラズマの非熱的状態を直接計測する有力な手段であり、太陽フレアにおける高エネルギー粒子生成機構を探るための観測手段と考えられてきている。従来の研究では、結晶素子を偏光計測素子として使用してきているが、素子の光学特性により観測可能なエネルギー帯域は3keV以上に限られる。このために、1KeV以下の低エネルギーの領域での偏光観測は実施できていない。また、このエネルギー領域での偏光特性診断はプラズマ加熱現象の解明にも寄与すると考えられる。結晶素子に比較して、多層膜素子は観測帯域を自由に設定できる利点をもち、かつ結晶では観測ができないより低エネルギー帯域の観測も可能となる。そこで、本研究では基礎開発として1keV近辺での観測を念頭に起いた高精度多層膜偏光子の設計および製作を実施した。パラメーターサーチにより、目標エネルギー近辺で直線偏光子としての機能を示す多層膜偏光子の物質として、スカンジウム・クロムを選択し、実際にシリコン基板上蒸着した(NTTアドバンストテクノロジーにより製作)。製作と平行して、偏光素子の評価方法について、大規模放射光実験施設Spring-8を用いる評価試験方法を、同施設の研究者とともに実施し、現状施設において当該素子の偏光性能検定が可能であることを確認した。性能評価試験は17年度に実施予定である。また、観測データからプラズマの特性を導き出す手法を開発するために、太陽プラズマの偏光現象について、国内の太陽プラズマ研究者、およびフランスおよびスペインの研究機関の研究者と、意見の交換を実施した。特に輝線プロファイルの偏光依存性から、プラズマのパラメーターを導出する手法についての検討を実施した。
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