2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16740108
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永田 伸一 京都大学, 大学院・理学研究科・附属天文台, 助手 (30362437)
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Keywords | X線光学 / 多層膜 / 太陽プラズマ / 偏光計測 |
Research Abstract |
本年度は、1keV領域の多層膜偏光素子開発手法の改良に取り組んだ。多層膜素子による直線偏光フィルターは、直交する偏光の反射率の違いを利用する。このために、高精度偏光測定を実現するためには、二つの偏光の反射率の比(消光比)と同時に、取り出す偏光成分の反射率を高める必要がある。前者は製作する薄膜の物質定数のパラメータサーチにより最適化が可能である。他方、偏光フィルターとしての反射率そのものを高めるためには、数Å周期で生成される薄膜構造の各境界面での粗さを抑える技術が必要とされる。そこで1keV領域で反射率1%を安定して実現することを目指して、高反射率化の技術開発を実施した。製作した素子の構造解析により、安定な周期構造が形成されていることを確認した。製作された素子は、今後、大型放射光施設Spring8にて使用される。素子開発と平行して、偏光スペクトル観測データからプラズマの特性を導き出す手法を開発するために、太陽プラズマの偏光現象について、国内の太陽プラズマ研究者、およびフランスおよびスペインの研究機関の研究者と、意見の交換を実施した。特に、可視光領域の偏光スペクトルから太陽磁場構造を導出する研究において顕著な業績をあげているスペインの研究グループと太陽表面で観測される偏光スペクトルと、その上空でのプラズマ温度分布に関する研究を実施した。その結果、太陽表面上で計測された偏光スペクトルのゆがみの具合と、その上空領域でのプラズマの加熱率に関係があることを見出した。これは、太陽上空のプラズマ加熱には、その直下の乱流運動の度合いが関係することを示唆している。この高精度偏光測定からプラズマの性質を導き出す手法は、極端紫外線領域に適用することで、加熱現象の素過程の探査が期待される。
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Research Products
(1 results)