2004 Fiscal Year Annual Research Report
ベクターボソン生成過程を用いたヒッグス粒子の研究(発見へのロードマップ)
Project/Area Number |
16740125
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅井 祥仁 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教授 (60282505)
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Keywords | ヒッグス粒子 / LHC・ATLAS実験 / エネルギーフロンティア / 標準理論 / QCD / 質量の起源 / 超対称性 / 素粒子物理学 |
Research Abstract |
ヒッグス粒子を発見し、質量の起源を探ることは素粒子物理学の緊急かつ重要な課題であり、2007年実験開始予定のLHC・アトラス実験で、ヒッグス粒子の発見が約1年の実験で可能であることを2003年度に示した。特に従来LHCでの研究が難しいとされていた軽いヒッグス粒子(<130GeV)の発見能力を、Vector Boson Fusion過程・Higgs→ττモードを用いて著しく高めた。 2004年度は、この研究を更に推し進め、より実験に近い状況での研究を行った。研究の柱は二つある。 (1)Full simulationを用いて、τ識別の研究やミッシングエネルギーの測定の研究を行った。まず、ノイズ・パイルアップなどの効果を入れて、より現実的な研究を行う上で必要となるツールの開発と、その上で、τ識別やエネルギーの流れの測定精度をより精度を高める研究をすすめている。また、ミッシングエネルギーの測定でも、この物理的な低エネルギー成分と、ノイズ・パイルアップの分離が必要である。これを分離する方法の研究を行っている。 (2)もう一つの研究の柱は、より現実的にバックグランドを評価することと、2007年に実験データを用いてバックグランドを規格化する(バックグランドの絶対量を、データを用いて評価する)方法を確立することにある。これまでのバックグランドの評価は、パートンシャワーモデルを用いて行っているため、Ptの高い領域では過小評価になっている。終状態に3-6体のパートンを含む高い次元のQCDの予言を取りこんだバックグランド評価を世界に先駆けて行った。この結果、従来予測していたよりバックグランドが約2倍程度多くなる可能性が示された。これは、ヒッグスばかりでなく、超対称性研究にも重要な成果であり、大きなインパクトがあった。現在さらなる研究を進めている。
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