2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16740128
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内山 隆 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (60361656)
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Keywords | 重力波 / レーザー干渉計 / 低温 / 神岡 / 熱雑音 |
Research Abstract |
新しい方法で冷却と低熱雑音の両立を図ったCLIO用低温懸架系の設計、図面作成、組み立て、インストールを行った。2006年2月に鏡を目標温度の20K以下に冷却し、干渉計の運転に成功した。世界初の低温重力波レーザー干渉計である。 Cryogenic Laser Interferometer Observatory (CLIO)は、レーザー干渉計型重力波検出器である。特徴は低温技術を導入して鏡を20Kに冷却する点にある。冷却される鏡は、振り子状に懸架される。この振り子は熱振動し、鏡を揺らす。これを振り子の「熱雑音」と呼ぶ。CLIO用の低熱雑音な懸架系を設計制作することが本研究の目的である。 鏡は、レーザーにさらされるため、常時発熱する。その熱を低温(約10K)に冷却されている低温真空漕に逃しつづける事によって鏡の低温が維持される。従来の方法では、低散逸と高熱伝導率を併せ持ったサファイアファイバーを使って鏡を吊していた。低散逸は低熱雑音に寄与する。つまり、低熱雑音と冷却の二役をサファイアファイバーが担っている。しかしながら、冷却と低熱雑音は懸架ワイヤーに相反する要求(冷却のためには太く、短いワイヤーが適しているが、この場合、熱雑音は大きくなる)をするため、設計が行き詰まる場合がある。CLIOは鏡の入熱が50-100mWと大きく、冷却と低熱雑音の両立が困難であると判断した。 以上の問題を解決するため、新しい鏡の懸架方法を考案し、実施した。この新しい方法では、鏡を吊す(懸架)ワイヤーと熱を流す(伝熱)ワイヤーを別々に用意し、鏡に取り付ける。これにより懸架ワイヤーを細く長くすることができ、低剛性な振り子が可能になる。剛性は散逸と同じように熱雑音に寄与するので、低熱雑音な振り子が設計出来る。この手法により、従来の方法よりも熱雑音を約1/7に下げ、かつ鏡を冷却できる懸架系の設計に成功した。
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Research Products
(2 results)