2004 Fiscal Year Annual Research Report
コンパクト天体に於ける陽子加速機構と高エネルギー宇宙線の定量的評価
Project/Area Number |
16740134
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長滝 重博 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教授 (60359643)
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Keywords | 陽子 / 加速 / 宇宙線 / ガンマ線 / ニュートリノ / コンパクト天体 / 超新星 / 中性子星 |
Research Abstract |
陽子加速を起こすと思われるコンパクト天体のひとつに超新星爆発があるが、特に重力崩壊型超新星については、親星が有意な角運動量や磁場を保持したまま重力崩壊を起こした場合、爆発が非対称になる可能性が指摘されている。本年度の成果として、そのような磁場や角運動量を持った重力崩壊型超新星の数値計算を行った結果、特に強い磁場を与えた場合には回転軸方向に伝播するジェット的な爆発を起こすことが示された。通常、宇宙に於ける粒子加速は、衝撃波を介したフェルミ加速機構を通して行われていると考えられている訳だが、このようなジェット的な爆発が起こった場合、衝撃波の形状、強さが球対称爆発とは異なるため、結果として得られる加速された陽子のスペクトル、量は変更を受ける可能性が高い。その意味で今年度示した数値計算の結果は、陽子加速について大きな意味があると考えられる。 またBESS実験などで観測されている宇宙線としては最低の(GeV-TeV程度)エネルギーを持つ陽子から観測されている宇宙線のうち最高のエネルギー(EeVクラス)に至るまで、地球に届くまでには我々の銀河中に存在する磁場によって伝播方向は曲げられている。それ故低エネルギー側ではほとんど拡散近似が成立するほどに、また超高エネルギーでは少なくとも数度程度曲げられることが知られている訳だが、本年度、実際に銀河の磁場構造を与え、モンテカルロ計算により宇宙線の伝播に対する銀河磁場の影響を定量的に評価を行った。結果として、銀河中心に於いては特に磁場が強くなっているためEeVクラスのエネルギーを持つ宇宙線といえども銀河中心付近にある程度の時間トラップされていることが示された。これにより、超高エネルギー宇宙線といえども地球で観測された宇宙線の到来方向をそのままソース方向とは考えることは出来ず、特に銀河中心付近ではほとんどソースの揚所に対する情報が失われていることが明らかにされた。また低エネルギー側では初期宇宙に於けるミニブラックホールの蒸発により生成される陽子BESS実験に対する影響を、上記伝播の効果も考慮した上で評価を行い、GeV付近ではブラックホール蒸発起源の陽子である可能性があると結論された。
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