2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16740144
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
土屋 麻人 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20294150)
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Keywords | AdS / CFT対応 / Bubbling AdS / 複素行列模型 / ジャイアントグラヴィトン |
Research Abstract |
AdS/CFT対応の典型的なものとして、N=4 super Yang Mills理論とAdS_5×S^5上のtype IIB超弦理論の間の対応が示唆されている。2004年にLin-Lunin-Maldaceは、type IIB超重力理論において1/2 BPS状態でR×SO(4)×SO(4)の対称性を保つスムースな解は10次元内のある2次元平面内の液滴の配位と1対1に対応することを示した。(いわゆるbubbling AdS geomtries。)この液滴が1次元自由フェルミオン系の位相空間の液滴と同一視できることに対していくつかの証拠が与えられている。一方、ゲージ理論側ではこの対称性をもった演算子はカイラルプライマリー演算子であり、1つの複素スカラー場を使って表され、この演算子のダイナミクスは元のSuper Yang Mills理論を1次元に還元して得られる複素行列模型によって記述できる。私は高山靖敏氏と共同でこの複素行列模型と1次元自由フェルミオン系との対応を確立した。さらに、この対応を用いて、カイラルプライマリー演算子とWigner位相空間分布との対応を見出し、またジャイアントグラヴィトンを表す演算子に対応する状態を1次元のフェルミオン系のヒルベルト空間上に構成した。この状態は予想されているジャイアントグラヴィトンの液滴の配位を再現している。我々の結果は上記の同一視に対する証拠を与えている。また、我々の見出した対応は今後のこの分野の解析の基礎を与えるものである。液滴は時空の一部であり、複素行列の固有値分布に対応している。したがって、我々の研究はAdS/CFT対応をIIB行列模型などの思想に従い、行列の固有値分布から時空を得ることにより直接理解するという方向性への第1歩である。今後、この方向性には大きな発展が期待できて、IIB行列模型へも大きなフィードバックをもたらすものと考えられる。
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