2004 Fiscal Year Annual Research Report
非等方格子QCDによるフレイバー物理のためのハドロン反応過程の精密計算
Project/Area Number |
16740156
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
松古 栄夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 助手 (10373185)
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Keywords | 格子QCDシミュレーション / フレイバー物理 / 有限温度・密度QCD |
Research Abstract |
本年度においては、非等方格子の精密なパラメター決定法の開発を主に行った。 ゲージ場の作用に関する非等方パラメターの決定方法として、最近Luscher-Weiszによって提唱された手法を用い、十分な精度である0.2%誤差でこのパラメターの決定を行った。これは、これまでの1%レベルの決定結果を大きく改良するものであり、将来のハドロン行列要素の精密計算に不可欠の要素である。また、クォーク場についても、シュレーディンガー汎関数法を用いた精密決定法の開発を行い、今後の精密計算に向けて十分な精度でパラメターを決定できる見通しを得ることができた。これらの方法を用いて、実際のハドロン行列要素の精密計算に耐えうるパラメターの決定を現在行っているところである。 また、10%レベルでは、これまでに開発してきた非等方格子の方法による行列要素の計算が可能であり、これを実際に行うことで、我々の方法の有効性を示すことができる。このため、Dメソンのスペクトルと崩壊定数の数値シミュレーションによる計算を行っており、物理的な値を求めるために必要となる繰り込み係数の摂動論による計算も同時に進めている。これらについても大部分の計算を行うことができ、現在論文としての発表に向けての最終的な準備を進めているところである。これらの成果については、国際会議での発表を行い、プロシーディングとして公表した。 また、これまでに進めてきた、有限温度QCDにおけるハドロンの遮蔽質量に関する密度効果の、格子QCDシミュレーションによる計算についても成果を得た。これは表記の研究課題とはやや赴きを異にするが、有限温度QCDは非等方格子の手法が不可欠な分野のひとつであり、フレイバー物理と並んで我々の非等方格子QCDの開発の重要な動機のひとつである。この有限温度におけるハドロン遮蔽質量に対する密度効果については、以前に我々の行った計算をより連続極限に近い格子で、系統的な計算に発展させると同時に、今回新しくベクトル中間子とバリオンについても結果を得、論文として公表するに至った。 なお、フレイバー物理の計算では避けて通ることのできない、軽いクォークの定式化の問題についても、近年発展の著しいカイラルフェルミオンのシミュレーションへの応用に関して、準備的な研究を進めているところである。
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