2005 Fiscal Year Annual Research Report
非等方格子QCDによるフレイバー物理のためのハドロン反応過程の精密計算
Project/Area Number |
16740156
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
松古 栄夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 助手 (10373185)
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Keywords | 格子QCD / フレイバー物理 |
Research Abstract |
今年度は、軽いクォークに対するカイラル対称性を持つ理論の応用を中心に研究を行った。これまでは主として、重いクォークの安定化に対する非等方格子の応用の可能性を検討し、その有効性を示してきた。しかしながら、フレイバー物理に現れるハドロン行列要素の精密計算には、ダイナミカル・クォークの寄与も含めて、軽いクォークをどう扱うかも重要である。最近注目されているのが、カイラル対称性を保存する理論である。これはこれまで格子状で扱うことが困難であったが、近年理論的な発展があり、またコンピュータの高速化も伴って、数値計算への応用も可能になってきた。我々はオーバーラップ・フェルミオンと呼ばれる理論を、実際の数値計算に応用した。 このオーバーラップ・フェルミオンをダイナミカル・クォークとして含む計算を行う準備を進めた。KEKでは2006年3月より、新スーパーコンピュータシステムが稼動し、これに併せて大規模なシミュレーションのプロジェクトも開始することから、そのひとつであるJLQCDコラボレーションに参加し、共同研究の形でこれを行った。プログラムの開発、高速化を行い、現実的な期間内でプロジェクトを遂行することが可能であるという見通しが立ったことが、最大の成果といえる。 このオーバーラップ・フェルミオンを用いて、トポロジーを保存するゲージ作用の有効性を調べる研究を行った。オーバーラップ・フェルミオンの数値アルゴリズムを安定化させることがひとつの動機であり、またεレジームと呼ばれる領域を調べるためにも有効である。このような作用により、確かにトポロジーの変化は抑制されることがわかったが、完全ではないので、改良を継続中である。 また、重いクォークの有効理論、有限温度でのハドロン相関関数の研究についても進展があった。
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