2006 Fiscal Year Annual Research Report
非等方格子QCDによるフレイバー物理のためのハドロン反応過程の精密計算
Project/Area Number |
16740156
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
松古 栄夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 助手 (10373185)
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Keywords | 格子QCD / フレイバー物理 |
Research Abstract |
フレイバー物理に必要なハドロン行列要素を、格子QCDを用いて精度よく計算する手法の開発が本研究の目的である。そのために非等方格子の方法を開発しているが、最近の軽いクォークの理論的進展、重いクォークの計算手法の発展を鑑みて、今年度は等方格子を用いて以下のような研究を行った。これらの知見は、非等方格子の場合にも精度向上のために重要である。 軽いクォーク質量のカイラル極限への外挿は、ハドロン行列要素の計算において大きな不定性の原因であった。格子上でのカイラル対称性を厳密に持つ、オーバーラップフェルミオン作用は、このような不定性を取り除くことができる。このため、・オーバーラップフェルミオンを動的に扱う大規模計算プロジェクトJLQCD Collaborationに参加している。今年度は、トポロジーを固定する作用、ε領域(π中間子の波長が系のサイズよりも大きい場合)でのDirac演算子のスペクトルなどの研究で成果を得た。更にハドロンスペクトルや種々の行列要素の計算も進行中である。これらは2フレイバーでの計算であるが、より現実に対応した2+1フレイバーへの拡張の準備も行った。 クォーク質量無限大の極限では、有効理論でも繰り込みによる不定性をコントロールできる。他方で相関関数の統計誤差が非常に大きいという問題があった。最近開発された、加法的繰り込みの効果を抑制する改良作用や、相関関数の計算にクォーク伝播関数の全時空間からの寄与を取り入れる手法を用いると、これを改善できる可能性がある。我々は実際にこれらの手法の有効性を系統的に調べ、小林益川行列要素|Vub|の決定に重要なB*Bπ結合を、これまでにない3%という精度で求めた。これはクェンチ近似で行ったが、動的な場合にも応用可能であり、現在計算中である。
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