2004 Fiscal Year Annual Research Report
走査トンネル顕微鏡のトンネル電流に誘起される単一吸着子のダイナミクスの理論
Project/Area Number |
16740173
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
三井 隆志 富山大学, 工学部, 助手 (70303211)
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Keywords | 走査型トンネル顕微鏡 / 吸着子 / 非弾性トンネル電流 / ダイナミクス / 単一原子操作 / 振動モード / レート方程式 / 反応座標 |
Research Abstract |
走査型トンネル顕微鏡により、金属表面に吸着した単一原子・分子吸着子に電流を流すことにより、その非弾性電流成分が吸着子のダイナミクスを起こす素過程を明らかにした。 特に、吸着子の反応座標を直接に非弾性トンネル電流により励起するプロセスだけでなく、高振動数モードにいったんエネルギーを蓄えた後、反応座標系にエネルギーを移し、どのように単一吸着子のダイナミクスが誘起されるかをレート方程式を用いて、解析的に、定性的に解明し、その2電子過程のすべてを明らかにした。それによると、5つの素過程が存在し、(1)直接反応座標を2電子使って励起する。(2)はじめに直接反応座標を励起し、次に高振動数モードを励起し、その高振動数モードのエネルギーを反応座標に移し運動を励起する。(3)はじめに高振動数モードを励起し、そのエネルギーを反応座標に移した後、直接、もう一度反応座標を励起する。(4)高振動数モードを2回励起し、一段づつ二回エネルギーを反応座標に移し、ダイナミクスを励起する。(5)高振動数モードを2回励起し、一度に二段階の脱励起を行い一気に反応座標を励起することにより、単一吸着子の運動を励起する。これら、5つの素過程によるダイナミクスが起こされる確率を解析的に導き出し、いかなる条件の下でどのような素過程が重要になるかを明らかにした。この結果は現在、論文としてまとめて、学術雑誌Journal of Chemical Physicsに投稿中である。
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