2004 Fiscal Year Annual Research Report
高密度励起子系の時空間およびエネルギー空間における光学追跡と光制御
Project/Area Number |
16740179
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中 暢子 東京大学, 大学院・工学系研究科, 研究拠点形成特任教員(常勤形態) (10292830)
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Keywords | 励起子 / 高密度状態 / ポテンシャルトラップ |
Research Abstract |
磁気光学トラップ中に生成される原子気体のボース凝縮体は、超流動ヘリウムや超伝導物質と並ぶ巨視的量子現象の舞台として近年注目されている。一方、固体物理学においては励起子系のボース凝縮が古くから期待されながら、未だ決定的な実験的証拠は得られていない。ごく最近、申請者らは、亜酸化銅結晶中のひずみポテンシャルに捕捉された高密度の励起子系をつくり出すことに成功し、トラップ中心に局在した発光が観測されることを見出した。この発光の出現は調和ポテンシャルの基底状態に巨視的な数の励起子が溜め込まれたことを示唆しているものの、発光が微弱なため実空間分解と時間分解を同時に行う計測は難しく、これまでの実験精度ではボース凝縮と結論するに十分な結果は得られていない。そこで本研究では、実空間とエネルギー空間双方における励起子の分布の時間変化を、発光または散乱光をプローブとして効率良く可視化する手法の開発を目指した。今年度はまず、トラップのより精密な形状評価と設計のためにひずみハミルトニアンのパラメータを再吟味し、ポテンシャルトラップの計算精度を向上した。また、ごく最近発見されたμeVオーダーのオルソ励起子の微細構造までを考慮に入れて偏光選択則を考察し、散乱光によるプローブに最適な偏光配置を考案した。一方、実験系に関しては、微弱な信号を長時間積算する間のレーザー光の強度・ビーム位置揺らぎを最低限に抑えるべく、レーザー光源の電源にトランスを導入し、光学系、電気回路系全体の見直しを行った。また、分光器における検出効率を改善するための調整と高分散回折格子の選定を行った。
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