2004 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒光パルス列によるスピン歳差運動の全光学的制御
Project/Area Number |
16740180
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
早瀬 潤子 (伊師 潤子) 独立行政法人情報通信研究機構, 基礎先端部門量子情報技術グループ, 専攻研究員 (50342746)
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Keywords | スピン緩和 / 半導体量子井戸 / 超高速分光 / コヒーレントコントロール |
Research Abstract |
研究代表者である早瀬潤子は、本研究課題の開始時期である平成16年4月に独立行政法人情報通信研究機構へ異動した。新所属先では、フェムト秒チタンサファイアレーザーや液体ヘリウムクライオスタットなどの基本大型実験機器は揃っていたものの、実験室自体がまだ立ち上げ段階にあった。したがって本年度は、ほぼ全ての直接経費を物品購入費に充て、実験系を早急に立ち上げるべく全力を注いできた。現在までに、通常のフェムト秒ポンププローブ測定系に加え、S/N比がよくマルチパルス照射への拡張性の高いヘテロダイン型の測定系の構築を完了している。また、情報通信研究機構光デバイスセンターと共同でGaAs量子井戸の作製を行ない、その結果GaAs量子井戸中の励起子からの非線形信号を捉えることに成功した。その遅延時間依存性や偏光依存性を詳細に調べ、本研究課題遂行において必要な、励起子の位相緩和やスピン緩和、励起子エネルギーの不均一幅などの見積もりを行なった。研究代表者の異動のため当初の研究計画よりも若干の遅れを生じたものの、既に信号取得には成功しており、平成17年度にはこれらの成果を早急に外部発表したいと考えている。 さらに本年度は、情報通信研究機構量子情報技術グループを共同で、マルチパルス照射時のスピンの時間発展について詳細な理論的解析を行なった。その結果、いわゆるnon-Markov領域において光πパルスを照射し時間反転することで、スピンのデコヒーレンス(ラーモア歳差運動の横緩和に相当)を抑制できることを示した。この成果については、Physical Review B誌に発表予定である。
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