2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16740182
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
中西 良樹 岩手大学, 工学研究科, 助手 (70322964)
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Keywords | 超音波 / 弾性定数 / 静水圧力 / 一軸性圧力 / 結晶場基底状態 / 交換相互作用 |
Research Abstract |
本年度は静水圧力および一軸圧力下での弾性定数および磁化測定用の圧力セルを作成し層状Mn酸化物の物性について測定を行った。また超音波を用いた弾性定数の測定を行うために位相比較法による測定装置の立ち上げを行った。静水圧力下における磁化および帯磁率の測定ではCu-Be製の圧力セルを作成し圧力の校正には単体金属であるSnの超伝導転移温度を測定することによって行った。その結果の一部を紹介する。層状Mn酸化物(Pr_zLa_<1-z>)_<1.2>Sr_<1.8>Mn_2O_7(z=0.6)は磁場誘起型の金属絶縁帯転移を示す物質である。磁場を印加すると温度40K付近の前後で金属から絶縁体に転移する。同時に常磁性から強磁性的な転移もともなう。この強磁性的な秩序相は帯時率にカスプ的な振舞を示し、また磁場中冷却とゼロ磁場冷却で大きな履歴を生じることからスピングラス的な相であると考えられている。この転移点近傍の振舞について静水圧力依存性を行ったところこの転移点が圧力によって増大しちょうど磁場を増加させたときの振舞と同じような結果が得られた。つまり磁気的な相関が静水圧印加により強められたことを意味している。またゼロ磁場冷却した後印加磁場を5Tまで励磁しその後、ゼロ磁場にして磁場を抜き去るとこの系では特徴的なスピンの緩和現象が出現する。この緩和現象について緩和時間と緩和の時間変化の形状を記述する物理パラメーターτ及びβの圧力依存性を測定した。この結果からも圧力印加に伴って強磁性的な相関が強められることを支持している結果が得られた。これはMnを取り囲む酸素の八面体が印加圧力により収縮し酸素を介したMn間の相関が変化したこととMnの3d電子準位に及ぼす酸素の結晶場電場が変化しdγ軌道の2つの準位の占有率の変化を促したと考えられる。この系はMnを取り囲む酸素の八面体が層状にネットワークを築いており空間的次元性が低く一軸歪みにより大きな物性変化が期待される。また電子系と格子系(d電子の軌道自由度)の結合が強く相転移にともなう弾性異常も大きい。来年度は一軸圧力下での磁気測定および弾性定数の測定を層状Mn酸化物と充填スクッテルダイト化合物物質群について行う予定である。
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