2006 Fiscal Year Annual Research Report
不純物効果を利用した、銅酸化物超伝導がスピン揺らぎに起因するか否かを判定する研究
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16740187
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大橋 洋士 慶應義塾大学, 理工学部, 助教授 (60272134)
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Keywords | 超伝導 / 非一様性 / 超流動 / 強結合効果 / クーパー対形成 / 相互作用制御 / 相転移温度 / BCS-BECクロスオーバー |
Research Abstract |
クーパー対対形成にかかわる引力相互作用を外部から制御するという、本研究のアイデアに通じる手法が希薄原子気体で実現されたことを受け、前年度に引き続き、超伝導とも理論的枠組みが同じでかつ相互作用が可変な光学格子中のフェルミ原子ガスにおける強結合超流動を研究した。 前年度は、一様系に対し有効な理論であるNozieresと Schmitt-Rink(NSR)のガウス揺らぎの理論を格子系に適用したが、今年度はこの理論を越え、対の揺らぎの効果を自己無撞着t行列理論で取り込み、更に化学ポテンシャルに対する強結合効果も加味した理論を構築、弱結合から強結合にいたる超流動転移温度の変化を計算した。格子系でNSR理論と自己無撞着t行列理論を比較した結果、NSR理論は転移温度を4倍程度も過大評価することを見出した。すなわち、ハーフフィルドの場合、超流動転移温度の最高値は超流動揺らぎによりフェルミエネルギーの4%程度にまで抑えられることを見出した(NSR理論では16%程度である。)。この結果は系の詳細に依存しないものであり、同じく結晶格子が存在する銅酸化物高温超伝導でも、NSR理論を越えて自己無撞着t行列理論を用いることが定量的な議論のためには必要であることが示された。また、この結果を単純に用いると、例えば10000[K]のフェルミエネルギーを有する格子系では転移温度は400[K]程度が限界であり、これは今後、室温超伝導を目指す研究において一つの指針になると期待される。これと併せ、不純物やトラップポテンシャルのような空間の非一様性の効果を研究、強結合領域でクーパー対の空間分布構造を反映した微細構造が粒子密度の空間分布に現れることを示した。こうした微細構造は銅酸化物超伝導で実際に観測されており、対形成相互作用の影響を反映した効果として今後更に研究を進める必要がある。
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Research Products
(4 results)