2004 Fiscal Year Annual Research Report
サブミクロン固有ジョセフソン接合における磁束放射によるミリ波発振の研究
Project/Area Number |
16740188
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
掛谷 一弘 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 講師 (80302389)
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Keywords | ジョセフソン磁束 / フロー抵抗 / 境界効果 / マイクロ波放射 / ジョセフソンプラズマ |
Research Abstract |
本研究は高温超伝導体Bi2212から作成された微少な固有ジョセフソン接合におけるジョセフソン磁束のダイナミクスをC軸方向の直流磁束フロー抵抗やマイクロ波領域のスペクトル測定により明らかにし、様々な条件で制御することにより強力な電磁波の放射を検出することを目標としている。本年度はジョセフソン磁束と固有接合における集団励起モードの相関を調べるために、ジョセフソン磁束の動的な特性について磁束フロー抵抗のバイアス電流依存性を中心に測定を行った。まずは静的な磁束状態を知るために非常に低い電流密度(臨界電流密度の数%)でフロー抵抗を測定して周期的振動を得た。フロー抵抗の振動周期は低磁場においてジョセフソン接合あたり1/2個の磁束侵入に相当し、高磁場では同じく1個の磁束量子侵入に相当する磁場となり、その転移磁場は接合幅(磁場に垂直な方向)を小さくしていくほど減少し、ほぼ比例関係にあることがわかった。これはジョセフソン磁束が受ける接合端の効果(磁場の境界条件を満たすために生じる)が接合幅が小さくなるほど顕著になるために接合端の効果によって期待されるジョセフソン磁束四角格子の形成が低磁場から実現しているものと解釈できる。一方、電流密度を増加させていくと、転移磁場が低磁場にシフトする。これは接合端を流れる電流が増加するために四角格子が実現しやすくなっていると解釈できる。さらに電流を増やしていくと、低電流密度でフロー抵抗の極小値を与えていた磁場で極大値が得られることがわかった。このことは、フロー抵抗の振動が前述の境界効果によるフロー速度の変調だけでは十分に説明できないことを示している。現在われわれはフロー抵抗が磁束のダイナミクスと固有接合内の集団励起モードの共鳴に関連する現象である可能性について検討を進めている。
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