2004 Fiscal Year Annual Research Report
層状窒化物における高温超伝導の発現機構を担う電子状態の直接観測
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16740204
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井野 明洋 広島大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60363040)
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Keywords | 高温超伝導 / 層状窒化物 / 電子状態 / バンド分散 / ギャップ幅 |
Research Abstract |
本研究では、従来のBCS理論の枠内に収まらない特異な性質を示す高温超伝導現象が報告されている層状窒化物系を対象とし、その電子状態を広島大学放射光科学センターの高分解能光電子分光装置で直接観測することで、特異な超伝導現象を担っている電子状態を明らかにすることを目的としており、高温超伝導発現機構解明に向けた知見を得ることが期待されている。 本年度は、まず超伝導体の母体となる層状窒化物絶縁体β-HfNClの電子状態を詳細に調べ、価電子帯のバンド構造を高精度で決定した。価電子帯頂上のバンドの分散から、直接ギャップを3.8eV、間接ギャップを3.4eVとと見積もった。価電子帯全体のバンド分散の特徴的な構造は、局所密度近似計算の結果に対応しており、またバンド幅が一割ほど広くなっていることがわかった。超伝導臨界温度が高いのに、電子相関による繰り込み効果がほとんど見られないことは、この物質における高温超伝導発現機構が銅酸化物系のものとかなり異なっていることを示している。 また、β-HfNClの単結晶の広い領域に対して、リチウムイオンを均一に層間にインターカレーションすることに成功した。さらに、0.5mm程度の小型試料の測定を可能にするサンプルホルダーや劈開機構などを整備し、層状窒化物系のように単結晶の大型化が難しい物質の光電子分光測定を安定的に行える体制を確立した。また、光電子スペクトルの励起光エネルギー依存性を調べ、実験に最適な励起光を決定した。
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