2005 Fiscal Year Annual Research Report
液体アルカリ金属における圧力誘起電子転移の直接観測
Project/Area Number |
16740211
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
服部 高典 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究職 (10327687)
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Keywords | 電子転移 / 圧力 / アルカリ金属 / 液体 |
Research Abstract |
液体アルカリ金属(Rb, Cs)の圧力誘起電子転移を観測するために、高温高圧発生装置の開発を行い、その装置を用いて、放射光を用いた高温高圧下におけるX線回折実験を行った。 加圧に伴って、液体Rbの構造因子の第一ピークの半値幅が、約4万気圧より増大し始め、約12万気圧においても、その上昇は続いていた。これは液体中で、約4万気圧から電子転移が起こり始め、約12万気圧においてもその転移が終了しないことを示している。これまでの理論計算の結果では、約4万気圧から起こるという見解と、約8万気圧でもまだ起こっていないとする見解が対立していたが、今回の結果は前者の結果を支持する。これら液体に見られた圧力誘起電子転移は、結晶相における電子転移とくらべ、大幅に低い圧力で起こっている。このことから、液体では(原子のTopological disorderのために)s-d準位の逆転がより鋭敏に構造に反映されることがわかった。 得られたデータをもとに、液体の構造因子S(Q)を導出するプログラムをコーディングし、S(Q)の圧力変化を調べた。また、実空間情報である二体分布関数g(r)および配位数を、S(Q)より導出し、その圧力変化をしらべた。その結果、g(r)の圧力変化は一様収縮モデルでほぼ説明でき、配位数も10〜11と圧力にかかわらずほぼ一定であった。これは、液体においては、電子転移が起きてもその構造ゆらぎのために、結晶相で見られるような局所構造の低対称化が顕著に見られるということはなく、むしろ原子半径がただ単に小さくなるように見えるということを示している。
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Research Products
(3 results)