2004 Fiscal Year Annual Research Report
障壁ポテンシャルを含む一次元強相関電子系の輸送特性の外場による制御に関する研究
Project/Area Number |
16740213
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
引原 俊哉 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00373358)
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Keywords | 一次元強相関電子系 / 不純物ポテンシャル / トンネル伝導特性 / 磁場印加効果 / 朝永・ラッティンジャー流体 / ベーテ仮説法 / スピンフィルタリング |
Research Abstract |
磁場中の一次元強相関電子系における、不純物障壁ポテンシャルを介したトンネル伝導特性について調べた。この系では、磁場がない場合には、電子間の斥力相互作用による繰り込みの効果から、不純物ポテンシャルによる電子後方散乱の振幅が温度の低下とともに増大し、低温で電子が完全反射されることが知られている。 本年度の研究において、我々はまず、一次元強相関電子系の典型的な例として、一次元ハバード模型及び量子細線に着目し、磁場中に置かれたこれらの系の低エネルギー状態を記述する有効ハミルトニアン(二成分朝永・ラッティンジャー流体)を導出した。また、ベーテ仮説法を用いた解析を行うことで、有効ハミルトニアンに含まれる相互作用パラメータを、磁場の関数として定量的に決定することに成功した。そして、それらの結果を用いて、一次元ハバード模型、量子細線における不純物散乱の効果を調べることで、磁場が十分大きい場合には、不純物による電子散乱振幅の繰り込みフロー図の振る舞いが劇的に変化し、磁場に平行なスピンを持つ電子に対する不純物散乱が、温度の低下とともに抑制されうることを発見した。この結果は、磁場中の一次元強相関電子系では、ある温度領域において、「磁場に平行なスピンの電子は不純物を完全透過し、磁場に反平行なスピンの電子は完全反射される」という、スピン・フィルタリング効果が実現されることを意味している。今回の我々の研究成果は、スピン・フィルタリング効果の実現可能性を、非摂動的な方法で、現実的な系に対して示した初めての例であり、スピントロニクスにおいて重要な「完全偏極した電子流」を実現するための新しい機構を提案するものとして意義深いものであると考えられる。 以上の結果は、雑誌論文として、現在投稿中である。
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