2006 Fiscal Year Annual Research Report
障壁ポテンシャルを含む一次元強相関電子系の輸送特性の外場による制御に関する研究
Project/Area Number |
16740213
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
引原 俊哉 北海道大学, 大学院理学研究院, 助教授 (00373358)
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Keywords | 一次元強相関電子系 / 不純物ポテンシャル / トンネル伝導特性 / 磁場印加効果 / 朝永・ラッティンジャー流体 / 密度行列繰り込み群法 / 厳密対角化法 |
Research Abstract |
我々は、本年度の研究において、量子細線などの一次元強相関電子系における不純物トンネル伝導特性についての解析を行った。不純物散乱強度を定量的に議論するために、一次元ハイゼンベルグスピン模型、および、一次元ハバード模型に対して、密度行列繰り込み群法を用いた数値計算を行った。そして、数値的に求めた菊種励起子の励起ギャップのデータから、不純物散乱強度の目安となる物理量である位相シフトの値を定量的に求めた。その結果、位相シフトの値が、システムサイズが大きくなるに従い、ボゾン化法などにより予想される繰り込み群固定点の値へとフローしていく様子を見ることができた。この結果は、ミクロスコピックなモデルの励起ギャップから不純物散乱強度を定量的に見積もるための、解析スキームを与えるものとして意義を持つ結果である。 また最近、量子細線において、量子密度が小さくかつ一次元閉じ込めポテンシャルが緩やかな場合に、系のスピン自由度を記述するモデルが、通常の一次元スピン鎖から、リング交換を含んだジグザグスピン鎖へと変化することが報告された。我々はこの現象に着目し、スピン自由度がジグザグスピン鎖で記述される状況における量子細線の磁気特性に関する研究を行った。そして、厳密対角化法を用いた数値計算により、この系では、電子密度を変化させることで、これまでに知られている相とは異なる、新奇量子非磁性相および部分強磁性相が実現しうることを、初めて発見した。この結果は、電子密度と磁場を同時に制御することによる、より劇的な特性変化を伴う量子細線の不純物伝導特性制御の可能性を示唆するものであり、今後の研究の基礎となるものとして、意義深い結果であるといえる。
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