2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16740217
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中川 尚子 茨城大学, 理学部, 助教授 (60311586)
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Keywords | 非平衡定常状態 / 反応経路の対称性 / エネルギー障壁 / タンパク質 / エネルギーランドスケープ / inherant structure |
Research Abstract |
本研究では今年度、生体高分子の非平衡状態における熱力学的記述を模索するために以下の研究を行なった。 (1)非平衡定常状態での反応経路の自律的制御とそれに伴うエネルギー障壁の自発的変化 エネルギー障壁を越えることにより状態を変化させられる玩具モデル系を非平衡定常状態におき、平衡状態での既知理論(化学反応の遷移状態論)と比較、非平衡状態で現れる特性を見つけた。通常、2状態間の変化は正方向の変化と逆方向への変化の間に対称性があり、反応経路・エネルギー障壁が共通になる。しかし系が多自由度で配位に選択の余地がある場合は、非平衡下で対称性が崩壊し、反応の方向性が生じることがわかった。更に、非平衡状態で対称性が崩壊した状態について有効ポテンシャルを構成できることを示唆する結果を得、非平衡状態で取り出せる仕事を熱力学的に議論できる可能性を示唆できた。 (2)タンパク質エネルギーランドスケープの熱統計力学 エネルギー励起後のタンパク質の非平衡状態を特徴づけるための準備として、タンパク質固有の多重安定なエネルギーランドスケープについて、inherent structureの視点から統計力学的議論を行なった。数値計算によってinherent structureの状態密度を決定し、この量をもとに折り畳み転移をはじめとしたタンパク質の諸特性を説明できることが示せた。その結果、短時間局所的な調和的熱揺らぎと遅い大域的スケールの構造揺らぎがほぼ分離できることがわかり、タンパク質の非平衡状態での熱力学的議論を行なうための基盤を作ることができた。
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