2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16740225
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松井 淳 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (10274424)
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Keywords | ガラス転移 / 動的構造因子 / 分子動力学シミュレーション |
Research Abstract |
ガラス転移は動的な転移であると考えられている。これを理解するには、転移の過程で変化するダイナミックスを把握することが必要となる。特に転移点付近においては、緩和時間が著しく増大し、さらにその上、さまざまな時間スケールのダイナミックスが混在することもあって、これらすべての時間スケールのダイナミックスに相関があると予想される。しかしながら、ダイナミックス全体を見渡すことができる計測結果は、実験においても計算機シミュレーションにおいても、いまだ得られていない現状にある。この分野で望まれているのは、ダイナミックスの全貌をとらえるような幅広い時間と空間スケールでの計測、そして各ダイナミックスをスペクトル解析して、ガラス転移の非平衡性や不均質性を説明する理論的研究を発展させることである。本研究は、分子動力学シミュレーションを用いて、干渉性の動的構造因子を幅広い波数、振動数において計算して、ガラス転移の過程におけるダイナミックスの変化の全貌をとらえることをめざす。 干渉性の動的構造因子の計算では、非干渉部分に比べて、統計性が劣ることが困難となる。統計性を向上させる工夫として、入射波について球面平均をとり、統計性を増強することにした。そのために必要となる、周期境界条件下において入射波の球面平均を効率良くとる方法を開発した。この方法を用いて、今年度の計画の通り、比較的温度の高い状態についてのスペクトル計算をおこない、得られた計算結果から球面平均法の妥当性を検証した。
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