2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16740235
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 昇 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (90312660)
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Keywords | 電子相関 / 二重イオン化 / 電子線分光 / 散乱ダイナミクス |
Research Abstract |
本研究の目的は、電子衝撃二重イオン化実験を用いて電子運動の相関を直接観測する手法を確立し、現代の量子化学や物理の分野において最も重要なテーマの一つとなっている電子相関の本質に迫ることである。 標的の電子相関を調べるためには、高移行運動量領域における電子衝撃二重イオン化過程の散乱ダイナミクスに対する正確な理解が必要となる。本課題における実験、理論双方からの研究により平面波撃力近似(PWIA)に基づくshake-up過程だけでは二重イオン化の実験結果を説明できないことを明らかとした。そこで、二重イオン化過程の定量的な理解のため、二次のBorn近似計算に基づく散乱断面積の計算手法を開発し、two-stepメカニズムの影響を調べた。まず初めに、二重イオン化と似た過程である、ヘリウム原子の励起を伴うイオン化過程について計算を行った。この結果を1.2〜4keVという広い入射電子エネルギー領域にわたって行った実験の結果と比較し、本過程においてtwo-stepメカニズムが重要な役割を果たしているという興味深い知見を得ることができ、論文にまとめた。次に、本手法を二重イオン化についても適用し、その反応メカニズムの詳細についての検証を行い、two-stepメカニズムが重要な役割を担っていることを見出した。更に、Xeの4d電子イオン化領域において、巨大共鳴現象が重要な役割を果たすtwo-stepメカニズムにより引き起こされる、二重イオン化があることを示した。このような散乱ダイナミクスの理解により、実験結果から標的の電子相関の情報を明確に抜き出すための基盤を得ることができた。
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