2005 Fiscal Year Annual Research Report
結合振動子としての生命システムの自律分散的な機能発現と位相ダイナミクス
Project/Area Number |
16740243
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
猪本 修 九州大学, 大学院システム生命科学府, 特任助教授 (50332250)
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Keywords | 細胞間相互作用 / 結合振動子 / 位相ダイナミクス / 自律分散系 / 極微弱生命発光 / 活性酸素 |
Research Abstract |
多細胞システムにおける代謝制御の細胞間相関の一端を明らかにする目的で、アポトーシスのシグナル伝達過程に関与するフリーラジカルに着目し、極微弱生体発光によるモニタリングを試みた。ヒト子宮頚癌由来の株化細胞であるHeLaを分散培養し、有糸分裂を阻害してアポトーシスを誘導する2-メトキシエストラジオール(2-ME)を加え、細胞集団としてのアポトーシスの経過進行を観察した。その結果、細胞密度が低いときはアポトーシスに細胞間相関は見られず、ある一定の割合で細胞ごとに独立してアポトーシスを起こした。一方で細胞密度がある値を超えて高くなると、以下のような集団的効果が現れた。すなわち、(1)アポトーシス誘導が細胞間で協調的に起こり、(2)集団全体としてのアポトーシス発生率が格段に増大した。またこの際に、(3)一過的で強い発光が、ある決まった時刻(細胞死の4〜6時間前)に観察された。 なお、極微弱発光が観察されるのは細胞周期におけるG2/M期であり、細胞質と染色体の複製が終わって細胞が球状に膨張した状態である。したがって発光に現れる細胞間相関はアポトーシス実行段階における細胞質を介した情報伝達ではなく、それ以前のアポトーシス決定段階における高効率の細胞間シグナル伝達によって成される。このシグナル因子は同定されていないが、非常に高速で隣接する細胞に伝達し機能を発現する因子であると推測される。 今回見い出した現象が細胞密度に依存することから、細胞間相互作用に対して臨界的な細胞密度が存在し、これを超えると時間的・空間的な細胞間相関が顕著となって集団的なアポトーシスが起こったものと考えられる。したがってこの現象を支配する相互作用の因子を同定することで、アポトーシスや制癌作用の効率、ならびに制癌剤等の薬効を高めることができると期待される。
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Research Products
(1 results)