2004 Fiscal Year Annual Research Report
船舶からの水蒸気ゾンデ観測による熱帯西太平洋対流圏界面領域での脱水過程の解明
Project/Area Number |
16740264
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤原 正智 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (00360941)
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Keywords | 熱帯 / 対流圏界面 / 水蒸気 / オゾン / 放射過程 / 脱水過程 / 船舶観測 / ラジオゾンデ |
Research Abstract |
熱帯地域において過去に我々自身や他のグループにより取得された水蒸気・オゾンゾンデ観測データに基づき、対流圏〜成層圏における放射加熱率分布の算出を行った。算出に際し、日本、米国、英国にてそれぞれ独自に開発された放射計算プログラム計五種を用い、放射モデル間の比較も行った。対流圏界面領域に着目したところ、放射収支に最も重要な役割を果たしている物質は水蒸気であること、および二酸化炭素とオゾンも関わっていることが判明した。異なる放射モデル間の結果の差異は、主に短波放射の取り扱いに起因していることも分かった。気候変動に伴い予想される熱帯対流圏界面領域の気温構造の変化についても考察した。 スイス製のラジオゾンデ搭載用鏡面冷却型水蒸気計Snow Whiteの測定性能の検討や改良作業を進めた。南米スリナムにおけるVaisala社製ラジオゾンデRS80、RS90との同時飛揚観測結果の解析を進めた。また、黒色ステンレス製の測定空気導入口を開発し、昼間にもより精度の良い測定が保証されるようになった。下部成層圏における測定性能の向上には、コントローラーの最適化が鍵であることが判明し、今後の改良作業の指針が明確になった。 12月12日から1月12日の期間、熱帯西部太平洋パラオ近海にて、海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」に乗船し、オゾンゾンデ・Snow Whiteゾンデを合計15発飛揚した。同時期には、キリバス、インドネシア、ベトナムにおいても、同様のオゾン・水蒸気観測が実施された。各観測点における飛揚に際しては、大規模流れ場を予測し、観測点間における同一空気塊の変質をとらえることを試みた。また、「みらい」に同時に乗船した他の研究者により、3時間おきの定常ラジオゾンデ観測やMie Scattering Lidarによる雲粒子・エアロゾル連続観測などが実施された。その結果、対流圏界面領域に薄い雲層が出現ししばしば持続していることが観測された。また、この雲が硝酸などを含んだいわゆる成層圏雲を含む可能性が示唆された。脱水過程の解明および考察の深化に際し貴重なデータを取得することに成功した。次年度にデータの解析を進める。
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Research Products
(2 results)