2005 Fiscal Year Annual Research Report
船舶からの水蒸気ゾンデ観測による熱帯西太平洋対流圏界面領域での脱水過程の解明
Project/Area Number |
16740264
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤原 正智 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助教授 (00360941)
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Keywords | 熱帯 / 対流圏界面 / 水蒸気 / オゾン / 放射過程 / 脱水過程 / 船舶観測 / ラジオゾンデ |
Research Abstract |
2004年12月から2005年1月にかけて実施した海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」における水蒸気・オゾンゾンデ観測のデータ、および、同時期のキリバス、インドネシア、ベトナムにおける水蒸気・オゾンゾンデ観測のデータを解析した。流跡線解析の手法を用いて、観測点間における同一空気塊の変質を抽出することを試みた。流跡解析の結果、全38回の観測中、8つの観測ペアーにおいて、同一空気塊を観測していることが判明し、水蒸気濃度変化およびオゾン濃度変化について考察した。しかし、期待していた脱水(水蒸気減少)を示したペアーは1例しかなく、確定的な議論は出来なかった。今後の課題として、水蒸気センサーの精度のさらなる向上、流跡線計算の妥当性・現実性の検証、観測ペアー数の増大などの必要性が分かった。 「みらい」においては、ミー散乱ライダーによる上層雲等の連続観測および3時間おきのラジオゾンデ観測も実施されたので、これらのデータを用いて、圏界面付近を東進する大規模な擾乱に伴う圏界面領域の雲粒子(脱水過程に伴う生成物)の変動についてデータ解析を行った。東進擾乱の寒偏差が「みらい」上空にやってくると、圏界面領域内に雲粒子が出現した。しかし、寒偏差が去った後も引き続き雲粒子が観測され、しかも夜間に数kmに渡って降下するという顕著な日変化が見い出された。さらに、ライダーの偏光解消度などの情報から、対流圏界面領域の雲と高度12km付近の雲とでは、雲物理学的性質が顕著に異なることも見い出された。大規模東進擾乱に伴う熱帯対流圏界面付近の雲粒子変動については、数年前に他のグループによる簡単な報告があるのみで、今回はじめて詳細な変動や雲粒子の特質が観測されたと言える。観測された諸性質を完全に説明するには今しばらくの考察が必要であるが、1年以内には投稿論文としてまとめられるであろうと考えている。 上記二点の結果について、2月末に横浜で開催された「ブルーアース06みらいシンポジウム」にて発表し、他の研究者らと議論、情報交換を行った。 また、過去の観測およびデータ解析の結果を、共同研究者らと投稿論文にまとめて発表した。
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Research Products
(2 results)