2005 Fiscal Year Annual Research Report
データ同化手法による赤道域バリアレイヤーのエルニーニョ発生への影響に関する研究
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16740272
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
藤井 陽介 気象庁気象研究所, 海洋研究部, 研究官 (60343894)
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Keywords | バリアレイヤー / 海洋データ同化システム / 海洋長期解析データ / 太平洋赤道域 / エルニーニョ / 南太平洋回帰線水 / ENSO / 塩分変動 |
Research Abstract |
バリアレイヤーのエルニーニョ発生への影響を評価するため、気象研究所海洋データ同化システムによる1993年から2004年の海洋長期解析データを用いてバリアレイヤーの分布とその変動について解析を行った。その結果、次のことが明らかになった。 1.太平洋赤道域の暖水プール領域では、バリアレイヤーの厚さと海面水温はよく相関しており、バリアレイヤーが厚いほど海面水温が高くなる傾向になる。 2.1997年のエルニーニョ発達期のバリアレイヤー、水温、塩分の変動は以下のような関係であった。 (1)暖水プールの東端に見られる赤道塩分フロントは東へと移動し西経150度付近まで達していた。このフロントの移動は太平洋赤道域西部に蓄積していた暖水プールの水塊が西風に流されて西経150度付近まで移流したことを意味する。 (2)海面水温29.5度以上の領域は上記の塩分フロントに先行して東へと移動しており、これは移流では説明できない。 (3)バリアレイヤーの厚い(20m以上)領域は海面水温29.5度以上の領域にやや先行して東へと移動しており、この暖水の形成にはバリアレイヤーの鉛直混合による水温低下を妨げる効果が重要であることを示唆している。 3.エルニーニョ・南方振動(ENSO)と南太平洋回帰線水(SPTW)の変動との関係を調べたところ、SPTWの変動がENSOに伴う海面水温の変動と比べ1年程度先行していることが分かった。このことから、ラニーニャ期に強い貿易風の効果によりSPTWの赤道域への移流が促進され、その結果、赤道域でバリアレイヤーが形成され、エルニーニョが発生し、エルニーニョ期には逆にSPTWの移流が抑制されるために赤道域のバリアレイヤーが減少し、ラニーニャへと移行するという循環メカニズムを提唱した。
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