2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16740306
|
Research Institution | Hokkaido Tokai University |
Principal Investigator |
南 秀樹 北海道東海大学, 工学部, 助教授 (60254710)
|
Keywords | 堆積物 / 間隙水 / 懸濁粒子 / 海底フラックス / 物質循環 / 生物生産 / 酸化還元環境 / 海底境界面 |
Research Abstract |
今年度昨年度に引き続いてスールー海の懸濁粒子および堆積物試料の分析を行った。海水中の懸濁粒子と表層堆積物についてX線マイクロアナライザー(EDS)を使用し13元素の分析を行い,全X線のカウント数に対する各元素のX線のカウント数の割合を求めた。全ての海域で最も割合の大きな元素はケイ素であったが,0mよりも50m層付近でその割合は高い傾向を示した。特に顕微鏡観察の結果セレベス海では50mより下層においてケイ藻の破片のような粒子が数多く存在しており,その影響によるものと思われる。フィリピン海の表層堆積物は直上の底層水中の懸濁粒子の組成と比べ大きく異なり,鉄やマンガンなどの金属元素の割合が多くなった。これはフィリピン海の海底環境が酸化的であり,金属元素が堆積したためと考えられる。このことは底層水中の溶存酸素濃度(3.50ml/lでスールー海の約3倍),間隙水中の硝酸の鉛直分布(堆積物表層から40cm以深でも約40μmol/lもある)からも推察される。 海洋表層の生物生産の指標となる堆積物中の炭酸カルシウムの含有量は,水深に大きく依存しており最も浅いSU-4(534m)の表層堆積物では64%と高含量を示し,最も深いSU-1(4635m)では1%と低い値を示した。なお,この海域ではココリスが多産しており,顕微鏡観察の結果からもその溶解が水深の増加と共に増加していることがわかった。 また,オパールについても水深の増加と共に含有量は減少していたが,SU-4ではココリスの堆積が著しいため,その割合は極めて低い値を示すことがわかった。このように表層で発生する生物種の違いについても考察することができた。なお,ケイ素の間隙水からの拡散フラックスと堆積量を求め,海底境界面でのケイ素の循環モデルを作成することができた(堆積速度などの問題もある)。詳細については,2006年3月に開催された2006年度日本海洋学会春季大会「スールー海における懸濁粒子および堆積物の化学組成」で発表した。
|