2004 Fiscal Year Annual Research Report
モード水形成時の大気気体成分取り込み特性とその変動性に関する研究
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16740307
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
時枝 隆之 気象庁気象研究所, 地球化学研究部, 主任研究官 (90354555)
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Keywords | 北太平洋中央モード水 / クロロフルオロカーボン類 / 未飽和 |
Research Abstract |
1.海水中溶存ロフルオロカーボン類の分析をより高度に自動化することに成功した。この結果、これまでに比べてより高精度で高密度の海水中クロロフルオロカーボン類(CFC_s)のデータの取得が可能となった。(発表論文 気象研究所技術報告) 2.この装置を用いて測定した結果を気象庁気候・海洋気象部が所有する装置との相互比較実験を行った。その結果は3種類のCFCについていずれもよい一致を見た。(発表論文 Papers in Meteorology and Geophysics) 3.西部北太平洋黒潮-親潮混乱水域で形成される北太平洋中央モード水(NPCMW)におけるCFC_sの過去のデータの我々の解析から、NPCMW形成時に大気中CFC_sを飽和になるまで取り込まないまま下層へと輸送されている可能性が示唆されていた。 このことを確認するため、2004年6月から、上記水域において上記装置を用いた観測を実施した。その結果、形成後混合等によりあまり変質していないと考えられるNPCMW中のCFC_sは、大気中のCFC_sがここ数年大きな増減をしていないにもかかわらず、現在の大気に対して80%程度の飽和度しか持っていなかった。これは見かけ上10年程度前に海面古大気と接し、大気に対して飽和していたことになるが、モード水の寿命等から、実際のモード水の年齢とは考えにくいので、形成直後から持っていた年齢であると考えられる。すなわち、NPCMWが形成される際、その中に大気からのCFC_sを大気に対して飽和に達するまで取り込むことが出来ず未飽和状態のまま下層へと沈み込んでいることが確認できた。 このことは、これまでのCFC_sを用いた水塊年齢の見積もりのみでなく、見かけの酸素消費量(AOU)の境界条件についての再検討を警鐘するものである。(発表論文 Geochemical Journal)
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