2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16740313
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北村 光 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60335297)
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Keywords | 気体-液体転移 / 相分離 / 荷電粒子 / 溶媒和 / 核生成 / 水銀 / 極性流体 / プラズマ |
Research Abstract |
中性原子からなる流体の気体-液体転移や相分離といった相転移が、イオンや電子など荷電粒子の存在によってどのように影響されるかを、以下の事例に対して統計力学的見地から検討した。 1.二成分液体の臨界点近傍における溶媒和効果 二成分混合液体中で、イオンのまわりに形成される溶媒和殻の構造、ギンツブルグ-ランダウ理論に基づいて計算した。二つの液体成分間で誘電率が異なる場合、誘電率の大きな方の成分が優先的にイオンの周辺に集積する傾向が示された。特に、系が相分離の臨界点に近づくにつれて、成分比の空間分布の減衰長が発散的に増大すること(臨界電歪効果)を見出した。 2.極性流体中のイオン誘起核生成 準安定気体相にある水にイオンを付加した場合の核生成率の変化を、ギンツブルグ-ランダウ理論に基づいて系統的に調べた。イオン電荷と水分子の電気双極子との相互作用を、局所密度に依存した水の誘電率を通じて考慮することにより、イオン周辺の水和領域や、それを核とした臨界液滴の密度分布を計算した。共存線の気相側における溶媒和エネルギーは液相側におけるそれよりも大きく、両者の差が臨界液滴生成エネルギーを減少させる主要因であることを示した。 3.水銀の気体-液体相転移機構の解明 基底状態(6S)の水銀原子間にはたらく引力は弱く、気体-液体転移の実測臨界温度を再現することができない。そこで、密度の増大とともに原子のイオン化が起こり、生成したプラズマ(荷電粒子)がまわりの中性原子を分極させる効果を考慮した状態方程式を作成した。その結果、臨界温度の増大は説明できたが、共存曲線の形状が実測データと定性的に一致しないことがわかった。この結果から、6P状態への原子励起を考慮する必要性が示唆される。高密度水銀気体の凝縮機構の解明は、褐色矮星など低温・高密度大気の構造の理解にあたって重要な知見をもたらすことが期待される。
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