2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16740313
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北村 光 京都大学, 理学研究科, 助手 (60335297)
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Keywords | 液体水銀 / クラスター / 多体相互作用 / 状態方程式 / 気体-液体転移 / 金属-非金属転移 / 会合流体 / 天体内部物質 |
Research Abstract |
水銀の気体-液体相転移の機構を微視的な原子間相互作用に立脚して説明するため、まず、分子中二原子分子法とよばれる量子化学計算法を用いて、原子数3-7(配位数2-4.3)の水銀クラスターの伸縮振動に対するポテンシャルエネルギー曲線を計算した。その結果、多数の原子が同時に接近すると、6s,6p電子状態の混合が起こり、近距離領域で引力的な多体原子間相互作用(すなわち会合効果)が生ずることを見出した。その強さは、配位数の増大あるいは最近接原子間距離の減少とともに強くなることがわかった。さらに、配位数の大きな体心立方構造(配位数8)および面心立方構造(配位数12)の金属固体に対しても同様に多体ポテンシャルを計算したところ、-原子あたり1eV近くに達することがわかった。 このようにして得られた多体ポテンシャルを含む全ポテンシャルエネルギー関数を、剛体球流体系の相関関数を用いて統計平均することによって自由エネルギーを求め、それを剛体球直径(変分パラメータ)に関して最小化する「変分会合流体理論」を構築した。この理論に基づいて、経験的パラメータを用いずに、水銀、の状態方程式や気体-液体共存線の実測データを、気体から液体金属領域にいたる広範な密度・温度にわたって精度良く再現することに初めて成功した。さらに、比熱、音速、圧力などの熱力学量を計算し、それらが実験データを良く説明することを示した。ただし、金属-非金属転移近傍では多体ポテンシャルの評価が困難であり、理論と実験の状態方程式にやや不一致が見られた。 なお、この理論は、ミクロな原子間力、メゾスケールの多原子間相互作用、マクロな熱力学といった異なる階層の物理を一つの体系に包括している点に特色がある。また、きわめて一般的な定式化に基づいた理論であるため、他の液体や天体内部物質に応用できることが期待される。
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