2004 Fiscal Year Annual Research Report
水和効果に注目した蛋白質の部分モル体積及び圧縮率の理論的研究
Project/Area Number |
16750015
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
今井 隆志 立命館大学, 情報理工学部, 講師 (30373096)
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Keywords | 3D-RISM理論 / 蛋白質 / 部分モル体積 / 水和 / 高圧 / 疎水水和 |
Research Abstract |
1、3D-RISM理論を用いて、2つのペプチド(melittin, erabutoxin B)と6つの蛋白質(BPTI, ubiquitin, RNase A, lysozyme, β-lactoglobulin A, α-chymotrypsinogen A)の部分モル体積を求めた。この計算は分子液体論を蛋白質水溶液に応用した最初の例となった。さらに、得られた部分モル体積から水和による寄与を取り出すことに成功した。水和による寄与は、水のパッキングによる寄与と蛋白質-水間の静電的相互作用による寄与に分け、それぞれについて次のような知見を得た。水のパッキングによる寄与は蛋白質の幾何形状に因らず蛋白質の表面積に比例する。蛋白質-水間の静電的相互作用による寄与は、その大部分が表面に露出した荷電残基によるものであり、極性残基の影響は一般に考えられているほど大きくない。また、同様の解析をlysozymeの高圧構造に応用した。熱力学的関係により、高圧構造は常圧(天然)構造よりも幾分小さい部分モル体積を持つと予想される。3D-RISM理論により得られた部分モル体積を比べると、実際に120cm^3/molだけ高圧構造の部分モル体積が小さいことが分かった。また、その体積差は、主に蛋白質内部の空隙の体積が減少したものであり、この場合は水和の寄与があまり効いていないことを明らかにした。 2、蛋白質の変性に伴う疎水基の露出が、その体積変化にどのように寄与するかを調べるために、モデル疎水分子の疎水的環境から水への移行に伴う体積変化についてRISM理論を用いて解析した。その結果、体積変化は移行前の環境の圧縮率(体積的な揺らぎ)に本質的に依存することを明らかにした。また、体積変化と溶質サイズ及び移行前の環境の圧縮率の依存性を調べた結果、揺らぎの大きい環境に置かれている大きい疎水基が露出した場合、負の体積変化を伴うが、その逆の場合は正の体積変化を伴うことを示唆する結果を得た。
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