2005 Fiscal Year Annual Research Report
水和効果に注目した蛋白質の部分モル体積及び圧縮率の理論的研究
Project/Area Number |
16750015
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
今井 隆志 立命館大学, 情報理工学部, 講師 (30373096)
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Keywords | 3D-RISM理論 / 蛋白質 / 部分モル体積 / 水和 / 高圧 / 麻酔 |
Research Abstract |
(1)3D-RISM理論を用いて、16残基の人工ペプチド(AK16)のヘリックス-コイル転移に伴う部分モル体積変化を調べた。得られた体積変化を幾何学的な寄与と水和の寄与に理論的に分割することにより解析した。その結果、平均的に見ると、ヘリックス-コイル転移に伴う体積増加はコイル状態で生成する空洞の体積の寄与が最も重要であり、その一部がペプチド-水間の静電的な体積変化と相殺することが明らかになった。ただし、コイル構造は体積の観点で見ると必ずしも均一の性質を持っておらず、ヘリックスよりも体積の小さい伸びたコイル構造とヘリックスより体積の大きい通常のコイル構造に分類できることが分かった。 (2)麻酔の圧拮抗の分子機構を明らかにするため、3D-RISM理論を用いて、リゾチームとキセノン(麻酔薬の一つ)の結合に伴う部分モル体積を調べた。キセノンがリゾチームの基質結合部位に吸着した際、体積が増加する(つまり圧力で抑制される)ことが分かった。一方、キセノンがリゾチーム内部に結合した場合は体積変化がほとんど起こらないことが分かった。前者の体積増加は、キセノンが結合部位にルーズに結合したため生成する空洞が主な原因であることを明らかにした。これらの結果に基づき、麻酔の圧拮抗は、麻酔薬が蛋白質にルーズに結合した結果起こる現象であるという仮説を提案した。 (3)蛋白質内部に閉じ込められた水分子の平衡配置と個数が3D-RISM理論を用いて正確に予測できることを示した。(実験的にも分子シミュレーション等の他の理論的手法でも一般的にそのような水分子を検出することは難しい。)
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